経団連、副業推進に転換 高収益企業「ベア選択肢」

 

 経団連は21日、2021年春闘の交渉方針や雇用制度への見解を示す「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」の内容を大筋で固めた。前年は慎重な検討が必要と指摘した社員の「副業・兼業」について、推進する姿勢に転じたほか、春闘方針では高収益の企業は基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)も「選択肢」と明記した。

 経団連は同日、経労委の会合を開催し議論。経労委報告は来年1月に正式決定し、公表する。

 報告は副業・兼業に関し「自律的な働き方を支援することは社員の労働意欲を高め労働生産性の向上につながる」と指摘した。労働時間の把握や管理が困難との課題があったが、今年9月の政府のガイドライン改定で時間管理が容易になったことも容認に転じた背景にある。

 新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、都市部の人材が地方で副業・兼業すれば「人口増加など地方経済の強化に資する」との期待も示した。

 21年春闘方針では、高収益の企業に対して賃金引き上げを求め、実情に適した形でのベアも選択肢との文言を盛り込んだ。一方で業績悪化の企業は「ベアは困難」とし、「事業継続と雇用維持が最優先」と強調した。

 連合がベアを2%程度要求する目標を掲げたことについては「経営側はもとより労働組合からも共感や理解が得られにくい」とけん制した。

 賃上げを通じた消費拡大を目指してきた政府などの取り組みはコロナ禍でブレーキがかかるのは必至で、好業績企業の対応が経済下支えの焦点となる。

 経団連の中西宏明会長は21日の記者会見で「経済界も(賃上げの)モメンタム(勢い)を意識しており、上げられるところは上げるというのが第一歩だ」と話した。

 政府にはテレワークなど柔軟な働き方の定着に向け、働く場所や時間を本人に委ねる新たな労働法制の整備も求めた。

(共同通信社)