社員人脈で転職誘い 入社後の定着率高く

 

 働き手不足が叫ばれる中、中途採用の方法として社員の持つ人脈を生かして友人や知人を紹介してもらう「リファラル採用」が注目を集めています。社員が自社に向いていると思う人材を誘い、形式張らず会社の「生」の情報を知らせた上で入社してくるため、定着率が高く、採用コストも抑えられるといいます。

 リファラルは英語で「紹介、推薦」を意味します。これまでも学校の紹介や推薦による採用はありましたが、リファラル採用では、社内事情をよく知る社員が、自社の気風や文化に合うと感じ、必要とされるスキルを持つ人を勧誘します。面談など通常の選考を経た上で採用の可否を判断しますが、合格の確率は非常に高いようです。入社にこぎつけた人材を紹介した社員には報酬を与える制度を設けている企業もあります。

 人材確保が厳しい中小企業やベンチャー企業でこの採用方法が広がり、転職仲介会社が2017年に実施したアンケートでは、中小企業を中心とした501社中、60%以上が取り入れていました。導入の理由(複数回答)は「入社後に定着・活躍しやすいため」が59%と最も多く、「採用コストを下げるため」(56%)と続いています。

 求人広告や転職仲介会社は、積極的に職場を変わりたい求職者を対象にしていますが、リファラル採用では転職を考えていない人材にも、社員を通じてアプローチして自社の魅力を訴えることができます。

 最近は大手企業でも導入が増えています。急速に変化する経営環境の中、自社に合う多様な人材を獲得したいからです。富士通は18年から本格的に始め、年間20~30人を採用しています。トヨタ自動車でも今年6月から全社的に導入しました。

 社員が紹介するため、似たような人ばかりが集まるとの指摘もあります。他の採用方法とバランスを取った人材確保が必要かもしれません。

(共同通信社)