防大いじめ、国に賠償命令 大学責任認定、逆転勝訴 「教官の指導不適切」

 
 防衛大学校(神奈川県横須賀市)で上級生らに暴行やいじめを受けたのは大学側が監督を怠ったためだとして、福岡県に住む元学生の20代男性が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は9日、教官の指導が不適切だったとして大学側の責任を認め、請求を棄却した一審福岡地裁判決を変更、約268万円の支払いを命じた。
 防衛大では全員学生寮に住み、同室の上級生が下級生を指導する。増田稔裁判長は、男性の在学当時、学生間指導として、暴力や精神的苦痛を与える行為が一般的に存在していたと指摘。男性が体毛に火を付けられたり、顔を殴られたりした行為に関し教官の安全配慮義務違反を認めた。
 また、教官は一部の暴行を予見できたのに、適切な指導をしなかったため防げなかったと判断。男性は理不尽な行為が続くと考え退学を余儀なくされたとした。「学生間指導の実態を把握できておらず、暴力などを防ぐための検討も不十分だった」と、防衛大の取り組みの不備にも言及した。
 高裁判決によると、男性は在学中の2013~14年、上級生らに暴行やいじめを受け、体調を崩した。15年3月に退学した。
 男性は判決後の記者会見で「防衛大が非を認め、判決を受け入れてくれるよう願っている」と話した。防衛大は「重く受け止める。判決内容を慎重に検討し、適切に対応する」とコメントした。
 男性が当時の上級生らに賠償を求めた訴訟は昨年2月、福岡地裁が7人に計95万円の支払いを命じ、確定している。
(共同通信社)