一律賃上げ、現実的でない 経団連の春闘方針案

 

 経団連が2021年春闘の交渉方針で、新型コロナウイルス感染拡大を受け企業の多くが業績を悪化させていることから、業種横並びや各社一律賃上げは「現実的ではない」として、慎重姿勢を示すことが2日、分かった。7日の会長・副会長会議での議論を踏まえ、来年1月に決定する経営労働政策特別委員会(経労委)報告に盛り込む。

 報告案では、コロナ禍で同業種の間でも収益動向に差が生じる傾向が強まっていると指摘。業績が悪化している企業については、基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)の実施は「困難」とする一方、業績好調を維持している企業では「ベアを行うことも選択肢」と明記した。

 連合はすでに、ベアを月給の2%程度要求する方針を決めている。賃上げの流れを継続させる狙いだが、企業では航空や旅行業を中心に、人員削減や冬のボーナスを抑制する動きが相次いでおり、賃金交渉は厳しい展開となりそうだ。

 報告案では、業績が悪化した企業は事業継続と雇用維持が最優先の交渉になるため「定期昇給などの実施の可否も含めて検討せざるを得ない場合もあり得る」と指摘した。

 20年の春闘方針では「自社の実情に応じて前向きに検討することが基本」と横並びの賃金を否定した上で、ベアについては「選択肢となり得る」としていた。

(共同通信社)