公開日 2020.9.25 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
管理モデル(かんりもでる)
厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2020年9月改定)に示された、副業・兼業を行う労働者に対する簡便な労働時間管理の方法。
副業・兼業を行う労働者(労働基準法に定められた労働時間規制が適用されない者を除く)については、本業と副業の労働時間を通算して管理することになるため、本業・副業双方の使用者は、労働者からの申告により他方の使用者の下での労働時間を把握することなどが必要になる。このような労働時間の申告や通算管理などにおける労使双方の手続上の負担を軽減し、労働基準法に定める最低労働条件が遵守されるようにするために、ガイドラインでは、次のような簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)を提案している。
(1)副業・兼業の開始前に、時間的に先に労働契約を締結していた使用者(以下、使用者A)の事業場における法定外労働時間と、時間的に後から労働契約を締結した使用者(以下、使用者B)の事業場における労働時間(所定労働時間および所定外労働時間)とを合計した時間数が単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内で、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定し、各々の使用者がその範囲内で労働させることとする。
(2)使用者Aは自らの事業場における法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払うこととする。
(3)これにより、使用者Aおよび使用者Bは、副業・兼業の開始後においては、それぞれあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させる限り、他の使用者の事業場における実労働時間の把握を要することなく労働基準法を遵守することが可能となる。
管理モデルは、副業・兼業を行おうとする労働者に対して使用者Aがその適用を求め、労働者および使用者Bがこれに応じる手順で導入されることが想定されている。
なお、管理モデルを導入した使用者が、あらかじめ設定した労働時間の範囲を逸脱して労働させたことによって、時間外労働の上限規制を超えるなどの労働基準法に抵触した場合は、当該逸脱して労働させた使用者が、労働時間通算に関する法違反を問われ得ることとなる。