高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン

公開日 2020.7.22 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(こうねんれいろうどうしゃのあんぜんとけんこうかくほのためのがいどらいん)

 高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境づくりや労働災害の予防的観点からの高年齢労働者の健康づくりを推進するために、高年齢労働者を使用する、または使用しようとする事業者および労働者に取り組みが求められる事項を具体的に示し、高年齢労働者の労働災害を防止することを目的としたガイドライン。2020年3月16日に厚生労働省が公表したもので、「エイジフレンドリーガイドライン」とも呼ばれる。
 このガイドラインのポイントは、次のとおり。

【事業者に求められる取り組み】

 高年齢労働者の就労状況や業務の内容などの実情に応じて、国や関係団体等による支援も活用して、法令で義務付けられているものに必ず取り組むことに加えて、実施可能な高齢者労働災害防止対策に積極的に取り組むよう努める。具体的な取り組みは以下のとおり。

(1)安全衛生管理体制の確立等
経営トップ自らが安全衛生方針を表明し、担当する組織や担当者を指定するとともに、高年齢労働者の身体機能の低下等による労働災害についてリスクアセスメントを実施する。

(2)職場環境の改善
照度の確保、段差の解消、補助機器の導入等、身体機能の低下を補う設備・装置の導入等のハード面の対策とともに、勤務形態等の工夫、ゆとりのある作業スピードなど、高年齢労働者の特性を考慮した作業管理などのソフト面の対策も実施する。

(3)高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
健康診断や体力チェックにより、事業者、高年齢労働者双方が当該高年齢労働者の健康や体力の状況を客観的に把握する。

(4)高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
健康診断や体力チェックにより把握した個々の高年齢労働者の健康や体力の状況に応じて、安全と健康の点で適合する業務をマッチングするとともに、集団および個々の高年齢労働者を対象に身体機能の維持向上に取り組む。

(5)安全衛生教育
十分な時間をかけ、写真や図、映像など文字以外の情報も活用した教育を実施するとともに、再雇用や再就職などで経験のない業種や業務に従事する高年齢労働者には、特に丁寧な教育訓練を実施する。

【労働者に求められる取り組み】

 事業者が実施する労働災害防止対策の取り組みに協力するとともに、自己の健康を守るための努力の重要性を理解し、自らの健康づくりに積極的に取り組むよう努める。

(1)健康診断等による健康や体力の状況の客観的な把握と維持管理

(2)日常的な運動、食習慣の改善等による体力の維持と生活習慣の改善

【国・関係団体等による支援の活用】

 事業者は労働災害防止対策に取り組むに当たり、国、関係団体等による支援策を効果的に活用することが望ましい。

(1)個別事業場に対するコンサルティング等の活用

(2)高年齢労働者が安心して安全に働くための職場環境整備等に要する費用を補助する「エイジフレンドリー補助金」等の支援策の活用