医師過労自殺、労災認める 盛岡地裁、遺族勝訴


 2014年、岩手県奥州市の市立診療所の医師鈴木茂さん=当時(66)=が自殺したのは過労による精神疾患が原因だとして、鈴木さんの妻が公務災害(労災)と認定するよう求めた訴訟の判決で、盛岡地裁は5日、請求を認めた。「公務外」とした地方公務員災害補償基金岩手県支部の決定を取り消し、同支部長(達増拓也知事)に公務災害認定を命じた。
 基金側はタイムカードなどから「時間外労働は長くなく負荷が過重だったとは言えない」と主張したが、中村恭裁判長は「鈴木さんは唯一の常勤医となった13年1月以降、帰宅後も常に呼び出しなどに対応できる態勢を取っていた。一年を通じ完全に業務から解放されることはなかった」と認定。「過重業務で精神疾患を発症し、自殺に至った」と結論付けた。
 判決によると、鈴木さんは10年7月から診療所に勤め、14年1月に双極性障害(そううつ病)となり同6月に自殺した。妻は公務災害の認定を求めたが、基金側が16年2月に退けた。審査請求などでも結果は覆らず、18年に提訴した。
 判決を受け、妻は代理人弁護士を通じて「医師の心の苦しみや悲しみを裁判所に理解していただき、ありがたく思います」とコメント。地方公務員災害補償基金(東京)は「内容を検討し、対応を判断する」とした。
(共同通信社)