厚生年金2段階で加入促進 給付水準改善は微増 改革法案、国会提出


 政府は3日、パートなど非正規労働者の厚生年金の加入促進を柱とする年金制度改革関連法案を国会に提出した。保険料を負担する中小企業の経営に配慮し、加入義務の企業規模要件を2022年10月に101人以上、24年10月に51人以上と2段階で広げる。公的年金は少子高齢化で将来的な給付水準低下が避けられない。保険料を払う制度の支え手を増やし、水準改善を図る狙いがあるものの微増にとどまる見通しだ。
 企業要件緩和でパートなどの約65万人の加入が見込まれるほか、弁護士や公認会計士ら「士業」と呼ばれる個人経営事務所のスタッフも対象とし、計約70万人が新たに厚生年金の支え手となる。
 年金制度を維持するため、計画的に給付水準を抑える仕組みがあるため年金の実質的な価値は目減りしていく。厚生労働省の試算では、現役世代の平均手取り収入に対する年金受給額の割合「所得代替率」は現在の61・7%から約30年後には50・8%に低下。法案に盛り込まれた改革を実行すると0・2%分底上げされ51%になるという。政府は、公的年金に上乗せする私的年金の拡充策も盛り込み、自力での資産形成を後押しする考えだ。
 厚生年金は、フルタイムで働く人は企業規模にかかわらず加入義務がある。パートら短時間で働く人は現在、従業員501人以上の企業で週20時間以上働くことなどが加入要件だ。政府試算では、51人以上の企業が対象になると65万人が加入。厚生年金の保険料は労使が折半するため、企業の保険料負担は年1590億円増える。
 高齢者の就労を促す見直しも盛り込んだ。公的年金の受け取り開始年齢は65歳が基本だが、現在は60~70歳の間で選べる。この上限を引き上げ選択肢を60~75歳に広げる。65歳から遅らせると毎月0・7%ずつ増額するため、75歳からの受け取りでは65歳開始と比べ、毎月の年金額が84%増える。
(共同通信社)