リカバリー経験

公開日 2020.2.27 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

リカバリー経験(りかばりーけいけん)

 就業中に上昇した疲労やストレスを低下させて、元の活力や心理状態に回復させるための活動で、「休み方」とも言われる。効果的なリカバリー経験による疲労やストレスからの回復は、労働者のワーク・エンゲイジメントや労働生産性の向上を実現させる可能性が示唆されている。
 Sonnentag & Fritz(2007)の研究によれば、リカバリー経験には次の4種類がある。

(1)心理的距離〔Psychological Detachment〕
仕事から物理的および心理的にも離れている状態、つまり、仕事に関することを考えない状態。
(例:休日は、仕事のことを忘れて過ごす)

(2)コントロール〔Control〕
余暇時間に何をどのように行うのかを、自分で決められる状態。
(例:休日の過ごし方を自分で決められる)

(3)リラックス〔Relaxation〕
心身の活動量を意図的に低減させて、くつろいでいる状態。
(例:休日は、行動に余裕をもって、ゆったりと過ごす)

(4)熟達〔Mastery〕
余暇時間に自己啓発を実施する。

(例:休日に自分が好きなことを学ぶ。これにより、気持ちが前向きになったり、身体的疲労の一部を忘れたりすることができる)

 厚生労働省が、労働政策研究・研修機構「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査」(2019年)の回答個票を独自集計して、リカバリー経験とワーク・エンゲイジメント・スコア等との関係性の検証を行い、その結果が『令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-』(労働経済白書)で取り上げられたことから、日本においても、リカバリー経験という概念が注目されるようになってきた。
 なお、『令和元年版 労働経済の分析』では、リカバリー経験が労働者のワーク・エンゲイジメントや労働生産性の向上させる効果は、「労働強度が高い人手不足企業」において相対的に強い可能性があることが示されており、このような企業こそ「従業員がリカバリー経験(休み方)を得られるように様々な支援を講じていくことが有用」としている。