公開日 2019.12.20 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
パワハラ防止法(ぱわはらぼうしほう)
パワーハラスメント防止対策の法制化が盛り込まれた「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」(2019年6月9日公布)の通称。パワーハラスメント防止対策の法制化は、労働施策総合推進法の改正によって行われ、大企業は20年6月1日、中小企業は22年4月1日から施行される。
改正労働施策総合推進法において、パワーハラスメント防止対策として定められた主な内容は、次の点である。
(1)パワーハラスメント防止に向けて、労働者からの相談に適切に対応するための体制整備、その他の雇用管理上必要な措置を講じることを事業主の義務とする
(2)パワーハラスメントに関する労使紛争を、都道府県労働局長による紛争解決援助、紛争調整委員会による調停の対象とする
(3)厚生労働大臣は、パワーハラスメント防止のために必要な措置を講じない事業主に対して勧告を行い、事業主がそれに従わなかったときは、その旨を公表できることとする
パワーハラスメントの定義や事業主が講ずべき措置の具体的内容などについては、今後、厚生労働省が指針において示すこととされている。
なお、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」では、上記と併せて、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の改正による、セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントに対する防止対策の実効性の向上についても盛り込まれており、具体的には、次の点が定められた。
(1)セクハラやマタハラに関する相談をした労働者に対して、事業主が不利益な取扱いを行うことを禁止する
(2)他の事業主からセクハラやマタハラに関する雇用管理上の措置の実施に関する協力を求められた場合、事業主はこれに応ずるように努めなければならない
(3)セクハラ等の調停制度について、紛争調整委員会が、関係当事者の同意の有無にかかわらず、必要なときに出頭を求め、意見を聴くことができる者に「職場の同僚その他の参考人」を加える
このようなハラスメント対策の強化に対応するため、各企業において、労働者への研修や相談体制の整備などが行われている。