公開日 2019.9.27 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
ストック・アプリシエーション・ライト(すとっく・あぷりしえーしょん・らいと)
株価連動型報酬の一種で、一定の期間内に自社の1株当たりの市場終値が、あらかじめ設定した株価を上回った場合、その差額分を報酬として現金で受け取ることができる仕組み。株価が下がった場合は、報酬を受け取ることはできないが、減額されることはない。株価向上に対する経営陣の意識を高めるために導入されることが多い。
同じく株価連動型報酬である「ストックオプション」は、あらかじめ定めた価格で自社株を購入できる権利を付与する仕組み(権利を付与された者が、その株式を売却することによって、はじめて利益を得ることができる仕組み)であるのに対して、SARは、価格上昇分を現金で直接受け取るものである。したがって、ストックオプションと比較すると、SARには、「発行株式数は増加せず一株当たりの株式の価値が薄まることがない」というメリットがある一方で、「報酬を支給する時点で、会社は多額の現金を準備しなければならない」というデメリットがある。
なお、SARは、税法上、一定の要件を満たせば、役員給与の「業績連動給与」とされ、損金算入が認められている。
日本企業においては、SARを導入している事例は少なく、その認知度も低かった。しかし、2019年に大手自動車会社において役員報酬のかさ上げのためにSARが使われたとの報道がなされたことから、それが世間に広く知られることになった。