団体長期障害所得補償保険

公開日 2019.8.20 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

団体長期障害所得補償保険(だんたいちょうきしょとくほしょうほけん)

 従業員が病気やケガによって長期間にわたり就業不能になったときの所得の喪失について補償する保険。英語名の「Group Long Term Disability insurance」を省略して、「GLTD」と呼ばれることもある。
 会社(団体)が契約者になり、従業員全員を保険に加入させて、会社が保険料を負担する「全員加入型」と、会社を通して希望する従業員のみが加入し、加入者が保険料を負担する「任意加入型」の2種類があるが、両者を組み合わせることも可能である。
 団体長期障害所得補償保険は、次の特徴を持っている。

(1)従来の所得補償保険に比べて補償期間が長く、最長で定年年齢まで補償を受けられる(就業障害発生時に加入者であれば、退職後も就業障害が続くかぎり、対象期間中は補償が継続される)

(2)業務上・業務外を問わず、ケガや病気による就業障害をカバーし、幅広い補償が受けられる。また、商品によっては、精神疾患による就業障害についても補償が受けられる特約を付加することもできる

(3)職場復帰後も就業障害が残り所得が減少した場合、所得喪失率に応じて補償が継続されることがある

(4)「全員加入型」では、会社・団体が負担した保険料は全額損金に算入され、また、「任意加入型」では、従業員が負担した保険料は介護医療保険料控除の対象となるなど、税制上の優遇措置を受けられる

 長期障害所得補償保険は、アメリカでは労働者の所得補償制度として広く浸透しているが、日本においては、健康保険の傷病手当金などで一定の所得補償が行われることもあって普及が進まなかった。しかし、近年、がんなどの治療を続けながら仕事を続ける従業員が現れる中で、「健康保険の傷病手当金では、休業期間中の所得補償としては十分とは言えないこと」「傷病手当金の支給停止後の所得補償がないこと」等の問題点が顕在化しはじめ、長期障害所得補償保険に加入する企業が増えてきている。

 労務行政研究所「人事労務諸制度実施状況調査」(2018年)によると、集計対象企業の10.5%が長期障害所得補償保険に加入しており、5年前(13年:6.5%)との比較でも増加傾向が見られている。