しわ寄せ防止総合対策

公開日 2019.7.25 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

しわ寄せ防止総合対策(しわよせぼうしそうごうたいさく)

 大企業・親事業者での「働き方改革の推進」と、それに伴う中小企業へのしわ寄せ(適正なコスト負担を伴わない短納期発注、急な仕様変更、人員派遣の要請および附帯作業の要請など)を防止する「取引適正化」を一体的に推進するため、厚生労働省・中小企業庁・公正取引委員会が連携して策定した総合対策。正式名称は「大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への『しわ寄せ』防止のための総合対策」で、2019年6月26日に公表された。
 この総合対策の四つの柱として、次の点が定められている。

(1)関係法令等の周知広報

・都道府県労働局・労働基準監督署が、あらゆる機会を通じて、労働時間等設定改善法に加え、下請中小企業振興法に基づく「振興基準」等についてもリーフレット等を活用して周知する

・「しわ寄せ防止キャンペーン月間」(11月)を設定し、経営トップセミナーの開催等の集中的な取り組みを行う

・地域の労使の代表が参加した協議会等における課題の共有と地域での取り組みを推進する

(2)労働局・労基署等の窓口等における「しわ寄せ」情報の提供

・下請等中小事業者から、大企業・親事業者の働き方改革に伴う「しわ寄せ」に関する相談が寄せられた場合には、「振興基準」等の説明を行うとともに、相談情報を地方経済産業局に情報提供する

(3)労働局・労基署による「しわ寄せ」防止に向けた要請等・通報

・労働局から管内の大企業・親事業者に対し「しわ寄せ」防止に向けた要請等を実施する

・下請事業者に対する監督指導において、労働基準関係法令違反が認められ、背景に親事業者による下請法等違反行為の存在が疑われる場合には、公正取引委員会・中小企業庁に通報する

(4)公正取引委員会、中小企業庁による指導および不当な行為事例の周知・広報

・下請法等違反の疑いのある「しわ寄せ」事案の情報に接した場合には、公正取引委員会・中小企業庁が厳正に対応する

・実際に行った指導事例や不当な行為の事例(べからず集)について、政府広報HP等を通じて、業界団体・個別企業へ広く周知・広報を行う

 厚生労働省、公正取引委員会、中小企業庁では、2020年4月からの中小企業への時間外労働の上限規制の適用に向け、緊密な連携を図りながら、上記の取り組みを実施していくことにしている。