代替休暇

公開日 2019.4.1 あした葉経営労務研究所

●平成22年4月の労働基準法改正により、時間外労働時間が1カ月60時間を超えた場合に、その超えた時間について5割以上の率で計算した割増賃金の支払いが義務づけられた(平20.12.12 基発第1212001号)。

●代替休暇は、労使協定を締結することで、本来であれば5割以上の率で計算した割増賃金の支払いが必要となる時間外労働時間に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる有給の休暇を与えることができる制度である。高率の割増賃金の支払いを回避できるだけでなく、長時間労働を行った労働者に休息の機会を与えるメリットもある。

●代替休暇を導入するには、①代替休暇の時間数の具体的な算定方法、②代替休暇の単位(1日または半日)、③代替休暇を与えることができる期間(60時間を超えた当該1カ月の末日の翌日から2カ月以内)、④代替休暇の取得日および割増賃金の支払日を労使協定で定める必要がある(労基則19条の2、平21.5.29 基発0529001)。

●代替休暇として与えることができる時間数の算定方法は、1カ月について60時間を超えて時間外労働をさせた時間数に換算率(労働者が代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率と、代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率との差に相当する率)を乗じるものとされている。仮に時間外労働が60時間以内の割増率を25%、60時間超の割増率を50%とした場合、60時間超の時間外労働時間に換算率(この場合は0.25)を乗じればよい。

●例えば、60時間超の時間外労働が1カ月16時間だったとすると、16×0.25=4時間が代替休暇として付与される。また代替休暇として与えることができる時間の時間数が労使協定で定めた代替休暇の単位(1日または半日)に達しない場合であっても、「代替休暇以外の通常の労働時間の賃金が支払われる休暇」と合わせて与えることができる旨を労使協定で定めたときは、当該休暇と代替休暇とを合わせて1日または半日の休暇を与えることが可能である(平21.5.29 基発0529001)。

●なお、代替休暇の取得は労働者の判断によるため(労基法37条3項)、労働者の代替休暇取得の意向については、1カ月について60時間を超えて時間外労働をさせた当該1カ月の末日からできる限り短い期間内に確認されるものとすること(平21.5.29 基発0529001)。

●また代替休暇制度は、労働基準法89条1号に定める「休暇」に該当することから、就業規則への記載が必要である。

(あした葉経営労務研究所 代表 本田和盛)