時間外労働の上限規制

公開日 2019.4.1 あした葉経営労務研究所

●働き方改革関連法の改正として、労働基準法において時間外労働の上限規制が導入された(平成31年4月1日施行、中小事業主は平成32年4月1日から)。長時間労働は、健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっている。これに対し、長時間労働を是正すれば、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり、労働参加率の向上に結びつく(平30.9.7 基発0907第1号)。

●これまで時間外労働の上限規制の行政指導基準であった限度基準告示(大臣告示)を廃止し、法律に格上げすることで、原則としての時間外労働の上限(限度時間)を明確にするとともに、特別条項付き36協定を締結することにより青天井で時間外労働が可能となっていた「臨時的な特別の事情がある場合」にも新たな上限規制を設け、これを罰則により担保することとなった。

●特別条項を付帯しない36協定においては、限度時間(1カ月45時間、1年360時間。対象期間が3カ月を超える1年単位の変形労働時間制により労働させる場合は1カ月42時間、1年320時間)が時間外労働の上限となり、限度時間を超えて労働させることはできない(労働基準法36条3項、4項)。

●時間外労働は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において限度時間まで可能であるが、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、限度時間を超えて労働させる特別条項を36協定に設けることができる。ただし、臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、2~6カ月の月平均80時間(休日労働含む)の上限を上回ることができない。また、1カ月の限度時間45時間を超えて働かせることができるのは、1年で6カ月以内とされている(労働基準法5項、6項)。これらに違反した場合には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される(労働基準法119条)。

(あした葉経営労務研究所 代表 本田和盛)