本書は、マネジャーに求められるリーダーシップとマネジメントに関する知識を身につけることを目的として、リーダーシップやマネジメントを学ぶ学生や大学院生、次世代の管理職候補となる若手や中堅の社会人、さらに、現にマネジメントに関わっている現役管理職を対象に書かれたものです。
第1章では、「マネジメントそしてマネジャーとは?」として、マネジメントとは何かということをP.F.ドラッカーの主張などに基づいて説明し、L.A.ヒルらの研究から導き出されたマネジメントに関する誤解や、マネジメントに関するさまざまな論点を考察。さらに組織の概念について、C.I.バーナードの近代組織論に基づいて解説しています。
第2章では、「マネジメントの基本」として、マネジメントの基本となるマネジャーの人間観について、E.H.シャインの人間観のモデル(経済人・社会人・自己実現人・複雑人)に基づいて解説しています。
第3章では、「リーダーシップの基本」と題して、リーダーとは一体何かを、R.J.ハウスらが主張するリーダーシップが生まれる三つのパターンで解説、次に、リーダーシップ論の代表的なテキストにおけるリーダーシップの定義を比較検討し、また、リーダーシップを語る上で必要不可欠なフォロワーの存在について、R.A.ハイフェッツらの主張を紹介、さらに、R.K.グリーンリーフの「サーバント・リーダーシップ」について解説しています。
第4章では、「リーダーシップ論の展開」と題して、リーダーシップ論の歩みについて、初期リーダーシップ研究における資質的アプローチ、行動アプローチ、状況アプローチの順でそれぞれの代表的研究を紹介し、それに続くカリスマ的リーダーシップ論や変革型リーダーシップ論について解説しています。
第5章では、「フォロワーの目から見たリーダーシップ」として、フォロワーの視点を重視したリーダーシップ研究を紹介。フォロワーのリーダーシップ認知について、リーダーシップ原因帰属モデル、リーダーシップ情報処理モデル、フォロワーが抱く暗黙のリーダーシップ論を取り上げ説明しています。
第6章では、「フォロワーシップについて考える」ということで、リーダーシップを受け入れるフォロワーに求められる行動としてのフォロワーシップについて考察し、R.E.ケリーの提唱した「模範的なフォロワー」や、I.チャレフの提唱した「勇敢なフォロワー」を取り上げています。
第7章は、「マネジャーに求められるもの」として、管理者行動論の諸研究を説明し、J.P.コッターの「ゼネラル・マネジャー」や、H.ミンツバーグの「マネジャーの仕事」と「マネジャーの実像」の議論などについて説明しています。
最新のリーダーシップ理論も織り込まれていて、リーダーシップ論だけでなくフォロワーシップ論についての解説もなされています。また、マネジメントや管理者行動について掘り下げているのも特徴です。
テキスト的な本ですが、序章で述べられているように、現役の管理職にとっても、管理職としての経験を振り返って整理し、次世代の管理職を育成するためのツールとして活用できる本であると思われ、一読してみるのも良いのではないでしょうか。
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※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2018年6月にご紹介したものです。
和田泰明 わだ やすあき
和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士
1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー