現物給与

公開日 2018.3.26 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

現物給与(げんぶつきゅうよ)

 食事の提供や社宅の貸与、商品の値引販売などのように、金銭以外の物、権利、その他の経済的利益をもって支給される給与。
 所得税法上では、次のものが現物給与として挙げられている(所得税基本通達36-15)。

(1)物品その他の資産の譲渡を無償または低い対価で受けた場合におけるその資産のその時における価額、またはその価額とその対価の額との差額に相当する利益

(2)土地、家屋その他の資産(金銭を除く)の貸与を無償または低い対価で受けた場合における通常支払うべき対価の額、またはその通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の額との差額に相当する利益

(3)金銭の貸し付けまたは提供を無利息または通常の利率よりも低い利率で受けた場合における通常の利率により計算した利息の額、またはその通常の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額に相当する利益

(4)(2)および(3)以外の用役の提供を無償または低い対価で受けた場合におけるその用役について通常支払うべき対価の額、またはその通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の額との差額に相当する利益

(5)買掛金その他の債務の免除を受けた場合におけるその免除を受けた金額、または自己の債務を他人が負担した場合における当該負担した金額に相当する利益

 これらの現物給与は、原則として給与所得の収入金額となり、所得税が課税されるが、職務の性質上欠くことのできないもの(例:使用者から支給される制服)などで特定の現物給与については、非課税になるなど、金銭給与とは異なった取り扱いが定められている。

 労働保険や社会保険の保険料算定における現物給与の取り扱いは、食事や住居で支払われる報酬の場合は厚生労働大臣が都道府県ごとに価額を定め、その他の報酬の場合はその地方の時価によって定めることとされている。
 なお、食事や住居の提供に当たり従業員から負担金を徴収する場合、労働保険では、その徴収額が公示額の3分の1以下であるときは、公示額の3分の1の額と徴収額との差額部分が賃金とみなされる(徴収額が公示額の3分の1を超えるときは、賃金とはみなされない)。
 一方、社会保険では、食事の提供の場合、本人から徴収する額が公示額の3分の2未満であるときには、公示額と徴収額との差額が現物給与価額となる(徴収額が公示額の3分の2以上であるときは、給与の取り扱いを受けない)。また、住居の提供の場合は、徴収額に関わらず、公示額から徴収額を差し引いた額が現物給与価額となる。