2018年06月19日掲載

人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 - [136]『新版 リーダーシップからフォロワーシップへ―カリスマリーダー不要の組織づくりとは』

(中竹竜二 著 CCCメディアハウス 2018年1月)

 

 本書は、2006年に早大ラグビー部監督に就任した著者が、2007年度から全国大学選手権2連覇を達成した際に刊行した著書の新版であり、「いいリーダーの資質」についてまとめた終章が加わったほかは、ほぼ旧版を踏襲しています。

 第1章では、リーダーシップとフォロワーシップを同レベルで考えなければならない時代がきたとし、組織に対して考えなければならないこととして、①リーダーが考える自分自身のリーダーシップ、②リーダーが考える自分以外のフォロワーシップ、③フォロワーが考える自分自身のフォロワーシップ、④フォロワーが考えるリーダーがとるべきリーダーシップの四つがあるとしています。

 第2章は、リーダーのためのリーダーシップ論です。リーダー特性論や「~力」という考え方を紹介し、それらはすべてがリーダーの大切な能力だが、全部の能力を持つべきだと思ってしまうと、神のごとく万能なリーダー以外は理想のリーダーになれないという矛盾に陥るとしています。一方、非理想のリーダー像には共通項が見いだしやすく、そこから逆説的に考えられる理想のリーダーの条件は、「ブレない」ことであるとしています。

 第3章ではこれを受け、リーダーとしてのスタイルの確立を説き、「中竹のスタイル」として何を貫き通したかを挙げ、スタイル確立のための鉄則を掲げています。また、Vision(ビジョン)・Story(ストーリー)・Scenario(シナリオ)の三つのフェーズを意識してマネジメントすることを提唱しています。

 第4章では、リーダーがフォロワーを育てるためには、部下に主体性を持たせることが大切であるとしています。部下の成長機会を手助けするのがリーダーの役目であり、フォロワーの資質と目標に合った環境を整えるとともに、フォロワー一人ひとりのスタイル構築を支援しなければならないとしています。

 第5章では、フォロワーシップ実践の際の具体的な思考スキルと手法を紹介し、フォロワーとの個人面談におけるチェックポイントを掲げています。そして、個人面談を通してワンサイズ大きなスタイルを目指させることが、お互いにとってエネルギーとなるとしています。

 第6章では、フォロワーの立場になって、どう組織を支えていくかが論じられています。フォロワーの選択肢として、①自分自身の個としての成長を最優先、②仲間(フォロワー)と共に成長する、③リーダーを成長させる、④リーダーを変える、⑤組織を脱退する、の五つを挙げ、①~②のパターンがフォロワーのためのフォロワーシップ行動であり、③~⑤はフォロワーのためのリーダーシップの考え方であるとして、①と②のパターンについて解説しています。

 第7章は、フォロワーが考えるリーダーシップ論です。ここでは、リーダーのプライドをコントロールすることを説き、その一つの方法として、リーダーそのものの人格ではなく、リーダーという立場に敬意を払う「ポジションリスペクト」という考え方を紹介しています。

 著者も指摘しているように、トップダウン型のリーダーシップは目に見えやすい一方で、フォロワーシップはなかなか見えてこない面があります。著者自身の経験に基づいて書かれた本書は、そうした意味では、その見えにくい部分をよく可視化しています。実績があるため説得力があり、ビジネスシーンに応用できる普遍性もあるように思いました。

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※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2018年2月にご紹介したものです。

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒) 
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長 
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格 
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに) 
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント 
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」 
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント 
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格 
    
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員 
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員 
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー