公開日 2018.2.21 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
ジェンダーハラスメント(じぇんだーはらすめんと)
性別により社会的役割が異なるという固定的な概念(ジェンダー)に基づいた差別や嫌がらせのこと。例えば、「男(女)のくせに」という発言で相手を罵倒すること、女性従業員だけにいわゆる「お茶くみ」をさせることなどが当てはまる。
「性」に関係する差別、嫌がらせという点では「セクシュアルハラスメント」に似ているが、セクシュアルハラスメントの対象が「性的な内容の発言および性的な行動」(性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗(しつよう)な誘い、必要なく身体へ接触すること、など)であるのに対して、ジェンダーハラスメントの対象が「(性的でないが、)性別に関係する不快な言動」であるという点で、両者は区別されている。
ジェンダーハラスメントは、具体的な次のような発言、行為を指す。
(1)女性に対して、「女のくせに、意見を言うな」「女らしくしろ」などの発言をする。あるいは、男性に対して「男のくせに、こんなこともできないのか」「男らしくしろ」などの発言をする。
(2)女性に対して「女性は家庭や育児を優先するべきだ」などの発言をする。あるいは、「男だったら、仕事を優先しろ」などの発言をする。
(3)女性だからという理由で、来客応対、電話当番、雑用などを命じる。あるいは、男性だからという理由で、力仕事や残業を命じる。
(4)男性従業員を「姓」で呼ぶ一方、女性従業員を「名」または「○○ちゃん」などと呼び、両者を区別する。
性別に基づく差別については、労働基準法4条で「男女同一賃金の原則」が、男女雇用機会均等法5条・6条で「性別を理由とする差別の禁止」が定められているが、現時点では、ジェンダーハラスメントの禁止やそれに関して事業主が講じるべき措置などを定めた法令やガイドラインは作られていない。