公開日 2017.10.12 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
ベーシックインカム(べーしっくいんかむ)
国(または公的機関)が、最低限度の生活を保障するため、国民一人ひとりに現金を無条件かつ永続的に給付する制度。老齢や失業など、生活に支障が生じ得る一定の状況に陥ったときに給付金を支給する社会保障制度とは異なり、ベーシックインカムは、国民全員に、生活に必要な最低限度の収入が得られることを保証するものである。
ベーシックインカムの考え方は、18世紀末から19世紀にかけて、産業革命の影響で市民の貧富の格差が大きくなる中で生まれたものであり、その後、ブラジルやフランスなどで限定的に制度導入が試みられてきたが、本格的な導入に至った事例はいまだにない。
ベーシックインカムの主なメリット、デメリットとしては、次のものが挙げられる。
【メリット】
(1)最低限の生活費が得られる安心感から、消費が拡大して景気が良くなる
(2)無収入状態に陥る心配がないので、新事業への挑戦や起業が積極的に行われるようになり、経済が活性化する
(3)雇用の流動化が進み、労働環境やワーク・ライフ・バランスが改善する
(4)従来の社会保障制度を縮小・廃止して、ベーシックインカムに一元化することにより、行政コストを削減することができる
【デメリット】
(1)働かなくても一定の生活ができるので、労働者の勤労意欲が減退して、労働生産性が低下する
(2)国の歳出が莫大なものになり、財政が悪化する
(3)従来の社会保障制度が縮小・廃止される中で、不利益を被る人も出てくる
近年、世界的に貧富の格差が拡大する中で、ベーシックインカムに対する関心が高まっているものの、その導入を検討した国・地域のほとんどが、財源面の問題から完全な実現は困難という結論に達して、「給付付き税額控除」や「高齢者世帯や子育て世帯向けの現金給付」など、従来の社会保障制度を拡充する施策を実施する程度にとどまっている。