ダイバーシティ2.0

公開日 2017.9.14 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

ダイバーシティ2.0(だいばーしてぃ2.0)

 多様な属性の違いを活かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目指して、全社的かつ継続的に進めていく経営上の取り組み。
 従来の「ダイバーシティ経営」は、女性、高齢者、障害者、外国人など多様な人材を受け入れる人事管理を中心とした取り組みであったが、「2.0」では、それを一歩進めて、優秀な人材の獲得、イノベーションの創出など、稼ぐ力を高める競争戦略を実行するための経営上の取り組みとして、ダイバーシティを位置づけている。
 経済産業省は、2016年8月に「競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会」を立ち上げて、企業の成長性や収益性の向上につながるダイバーシティ経営の在り方について検討を行い、17年5月には「検討会報告書」と「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」を発表した。
 ガイドラインでは、ダイバーシティ2.0を実践するためのアクションとして、次の七つを挙げている。

(1)経営戦略への組み込み
経営トップが、ダイバーシティが経営戦略に不可欠であること(ダイバーシティ・ポリシー)を明確にし、KPI・ロードマップを策定するとともに、自らの責任で取り組みをリードする。

(2)推進体制の構築
ダイバーシティの取り組みを全社的・継続的に進めるために、推進体制を構築し、経営トップが実行に責任を持つ。

(3)ガバナンスの改革
構成員の多様性の確保により取締役会の監督機能を高め、取締役会がダイバーシティ経営の取り組みを適切に監督する。

(4)全社的な環境・ルールの整備
属性に関わらず活躍できる人事制度の見直し、働き方改革を実行する。

(5)管理職の行動・意識改革
従業員の多様性を活かせるマネージャーを育成する。

(6)従業員の行動・意識改革
多様なキャリアパスを構築し、従業員一人ひとりが自律的に行動できるよう、キャリアオーナーシップを育成する。

(7)労働市場・資本市場への情報開示と対話
一貫した人材戦略を策定・実行し、その内容・成果を効果的に労働市場に発信する。投資家に対して企業価値向上につながるダイバーシティの方針・取り組みを適切な媒体を通じ積極的に発信し、対話を行う。

 経済産業省は、2012年度から、ダイバーシティ推進を経営成果に結びつけている企業の先進的な事例紹介を通じて、取り組む企業のすそ野拡大を図るため、「新・ダイバーシティ経営企業100選」として、経済産業大臣表彰を実施している。2017年度からは、これに加えて、「ダイバーシティ2.0」に取り組む企業を「100選プライム」として、新たに表彰することとしている。

参考:経済産業省「ダイバーシティ2.0検討会-報告書」ウェブサイト
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20170323001.html
経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/