公開日 2017.8.21 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・ 社会保険労務士)
プレゼンティーイズム/アブセンティーイズム(ぷれぜんてぃーいずむ/あぶせんてぃーいずむ)
「プレゼンティーイズム」とは、従業員が職場には出勤しているものの、体調不良やメンタルヘルス不調などの理由により業務の能率が落ちている状態。これに対して、病気やけが等により欠勤し、労務が提供されていない状態を「アブセンティーイズム」という。
アブセンティーイズムは、職場で仕事をしていないため、労働力の喪失として明確に把握することができるが、プレゼンティーイズムは、表面上は仕事をしている状態であるため、企業側は、労働力を喪失していること、および(間接的に)健康関連のコストが発生していることを捉えにくい。
近年の研究(※)では、従業員の健康関連のコストとしては、医療費やアブセンティーイズムにかかるコストよりも、プレゼンティーイズムのコストが圧倒的に大きいことが判明しており、それへの対応が重要な経営課題として認識されるようになってきている。
プレゼンティーイズムは、欠勤日数や医療費などのデータで捉えることができないため、測定することが困難とされている。一定時間内の処理量を実測することによって客観的にプレゼンティーイズムを捉えられる業務もあるが、それができない業務(例えば、ホワイトカラー業務など)では、自記式質問票を用いた主観的な測定方法を採らざるを得ない。
自記式質問票では「あなたの仕事のパフォーマンスの高低を10段階で評価してください」などの質問項目が設けられるが、こうすると自分に対する見方が厳しい人ほど、プレゼンティーイズムによる生産性の低下が大きいものと測定されてしまう。そこで、同じ質問票で自分以外の者のパフォーマンスも評価させて、「自分のパフォーマンス÷他者のパフォーマンス」を算出する(回答値を相対化する)ことにより、プレゼンティーイズムを測定する方法を採ることがある。このような方法で測定されたものを「相対的プレゼンティーイズム」という。
※プレゼンティーイズムのコストの大きさを示した研究結果を示した資料としては、次のものがある。
・Partnership for Prevention and U.S. Chamber of Commerce "Healthy Workforce 2010 and Beyond"
・東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット 『「健康経営」の枠組みに基づいた健康課題の可視化及び全体最適化に関する研究』