労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

公開日 2017.8.21 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・ 社会保険労務士)

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(ろうどうじかんのてきせいなはあくのためにしようしゃがこうずべきそちにかんするがいどらいん)

 労働時間の把握における自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握するもの)の不適正な運用に伴い、労働基準法に違反する過重な長時間労働や割増賃金の未払いなどの問題が生じている状況を改善するため、厚生労働省が2017年1月20日に策定した、労働時間の把握に関するガイドライン。使用者には労働時間を適正に把握する責務があることを明確にした上で、「労働時間の考え方」や「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」について明示している。
 このガイドラインでは、「使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること」とし、そのための方法として、次の事項を示している。

(1)原則的な方法

①使用者が、自ら現認することにより確認すること

②タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること

(2)やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合

①自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと

②自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること

③使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を講じてはならないこと。さらに36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働時間を管理する者や労働者等において慣習的に行われていないか確認すること

 厚生労働省は、2001年に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平13.4.6 基発339、いわゆる「46通達」)を策定しているが、このガイドラインは、その内容を踏襲しつつ、「自己申告による労働時間と入退場記録などで把握した在社時間との間に乖離が生じている場合には労働時間を補正すること」や「記録上、36協定で定めた延長時間数を守っているようにすることが行われていないかを確認すること」など、一歩踏み込んだものになっている。なお、46通達による旧基準は、本ガイドラインの策定に伴い廃止されている。