2016年11月11日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2016年11月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主任研究員 松岡 仁)

 

 ProFuture代表の寺澤です。
 10月18日、経団連は、現在の大学2年生が対象となる2019年卒業予定者向けの採用スケジュールを、17年卒・18年卒と同じ「4年生の6月 面接選考解禁」の方向で検討することになりました。就職活動の早期化是正、学生に学業を優先させることに引き続き配慮するとともに、度重なるスケジュール変更を避けたいとの狙いもあります。ただし、採用広報解禁からの企業研究期間が短すぎるとの指摘も強く、「3月 採用広報解禁」については前倒し案も引き続き検討していくとのこと。2月上旬まで実施される国公立大学の後期試験の日程を考えると、「2月1日」まで早めることは難しく、「2月15日 採用広報解禁」が最有力と言えそうです。
 経団連会員企業の7割近くはいまだに、2015年卒採用までのスケジュールだった「3年生の12月 採用広報解禁」「4月 面接選考解禁」を望んでいるとも言われていますが、19年卒採用での実現は難しいものと思われます。3月に18年卒採用解禁、12月に19年卒採用解禁と、10カ月の間に2年度分の採用広報解禁を迎えることになるばかりでなく、年内には19年卒採用スケジュールの方針を決定したいとのことですが、それでは解禁まで1年を切っている状態となります。合同説明会や企業セミナーの会場予約、大学の就職支援プログラムや就職ナビの年間計画等を考慮すれば、優に1年以上の期間は必要になります。1日も早い、経団連の方針発表が待たれます。

「人」の評判の良かった企業はどこか

 今回は、前回の「採用ホームページ」「セミナー・会社説明会」に引き続き、2017年卒の就活生に聞いた、「印象の良かったリクルーター・社員がいた会社」「印象の良かった面接官がいた会社」と、その理由を見ていきたいと思います。いずれも1人1~2票のみの投票となりますので、ここで名前の挙がった企業は「特に印象が良かった」企業ということになります。今回は「人」にスポットを当てています。また、企業名は伏せさせていただきますが、「印象が良くなかった」理由も併せてご紹介いたします。どちらの企業にも参考にしていただけるかと思います。
 まずは、「印象の良かったリクルーター・社員がいた会社」の文系のトップ10を見てみましょう[図表1]

[図表1] 印象の良いリクルーター・社員がいた会社(文系)

順位 企業名 票数
1 三井住友銀行 13
2 損害保険ジャパン日本興亜 10
3 JTBグループ 9
3 みずほフィナンシャルグループ 9
3 大和証券 9
6 アクセンチュア 8
7 楽天 6
7 全日本空輸(ANA) 6
7 日本生命保険 6
10 りそなグループ 5
10 三井物産 5
10 住友生命 5
10 東京海上日動火災保険 5
10 日本郵政グループ 5

資料出所:HR総研/楽天・みんなの就職活動日記「2017年卒就職活動動向調査」
(2016年6月、以下図表も同じ)

[1位]三井住友銀行

・私が最終選考に落ちた後も、大学の先輩として気に掛けてくれ、就活カフェなどを紹介していただけた(旧帝大クラス)

・親身になって話を聞いてくれた。自分の会社以外の話でも相談に乗ってくれた(上位国公立大)

・身なりもきっちりしており、あいさつもしっかりしてくれ、質問に対してもしっかり答えてくださった(その他私立大学)

・リクルーターの方が非常に親身で、親切で、部活の先輩のような気持ちになった(その他国公立大)

・社員の方の対応が丁寧で、就職活動のアドバイスもいただいた(上位私立大)

・他社のことで悩んでいても親身になって相談に乗ってくれた(上位国公立大)

[2位]損害保険ジャパン日本興亜

・私のことをしっかりと知ろうとしてくださり、優しく明るい方が多かった(早慶クラス)

・とても話しやすく、就活における不安などの相談にも乗ってくれた(その他国公立大)

・明るくて私たち就活生を心から応援してくれていることが分かった(上位私立大)

・ネットで社員訪問の予約ができたこと、会った方がとても穏やかで好印象な方だった(上位私立大)

・非常に懇切丁寧に対応していただけた。一学生ではなく、一社会人として見ていただけた(上位私立大)

・とても気さくで、一緒に働きたいと感じた(上位私立大)

[3位]JTBグループ

・説明会で会った方が面接の際に覚えていてくれた(その他私立大)

・包み隠さず話していただいた(中堅私立大)

・丁寧に相談に乗ってもらえた(中堅私立大)

・圧迫や威圧感はなく、気さくで話しやすかった(その他私立大)

[3位]みずほフィナンシャルグループ

・親身になって相談に乗っていただいたこと、疑問点は丁寧に説明をしてくださった(その他私立大)

・私に質問しつつ、社員ご自身のことも話してくださり、全然緊張せず、毎回お話しするのが楽しかった(上位私立大)

・どんな質問にも包み隠さず答えてくださった(中堅私立大)

・丁寧にアドバイスをくださった(中堅私立大)

[3位]大和証券

・就職活動のアドバイスや社内の雰囲気を分かりやすく丁寧に教えてくれた(上位国公立大)

・面接のたびに激励の言葉を掛けてくれた(上位国公立大)

・良いところも悪いところも教えてもらえた。とにかく気さくだった。選考に雑談が多い(中堅私立大)

・質問会で包み隠さず会社の良いところ、悪いところの話をしてくださった。また面接の前日に個別に電話で応援をしてくださったり、面接のフィードバックをくださったり、全体的にフォローが手厚かった。さらに内定辞退の際も嫌な顔をすることなく、「他社で頑張ってください。応援しています」とのお言葉をいただいた(早慶クラス)

キーワードは「親身・丁寧」「就活アドバイス・ES添削」

 続いて、「印象の良かったリクルーター・社員がいた会社」の理系のトップ10を見てみましょう[図表2]

[図表2] 印象の良いリクルーター・社員がいた会社(理系)

順位 企業名 票数
1 パナソニック 12
1 三菱電機 12
3 旭化成 5
3 西日本旅客鉄道(JR西日本) 5
3 日立製作所 5
6 NTTデータ 4
6 アクセンチュア 4
6 キヤノン 4
9 KDDI 3
9 ソニー 3
9 デンソー 3
9 旭化成ホームズ 3
9 花王 3
9 協和発酵バイオ 3
9 大日本印刷(DNP) 3
9 東レ 3
9 東海旅客鉄道(JR東海) 3
9 味の素 3

[1位]パナソニック

・資料作成の際に親身に相談に乗ってくださった(上位国公立大)

・自社のことだけでなく、就職活動全体のアドバイスも懇切丁寧にしてくださり、就職活動を応援してくれる姿勢が素晴らしかった(旧帝大クラス)

・親身に企業説明をしてくれているように感じた。また質問対応にも親身に答えてくれた(上位国公立大)

・こまめに連絡をくれた(その他国公立大)

[1位]三菱電機

・気さくで話しやすく、言葉にするのに困っている質問等を引き出してくれた(その他国公立大)

・面接対策、エントリーシート(ES)添削、会社についての質疑応答、迅速な連絡(上位国公立大)

・三菱電機のことのみならず、就職活動そのものに対して、相談に乗ってくださった(中堅私立大)

・リクルーターとしてだけでなく、先輩として親身に対応していただけたため、非常に感謝している(旧帝大クラス)

・ESの添削などしてくれて、その添削も非常に丁寧で助かった。またリクルーターを通した面談の予約などがスムーズだった(旧帝大クラス)

[3位]旭化成

・自分の会社でやっていることに自信を持っていて楽しそうに働いているように見えた(旧帝大クラス)

・親身になってアドバイスに乗っていただいた(旧帝大クラス)

[3位]西日本旅客鉄道(JR西日本)

・とても親身に対応してくれた(その他国公立大)

[3位]日立製作所

・忙しいのに関わらず、ESの添削や、何度も電話で励ましてくれました。また、問い合わせに対しての対応がとても早く、とても感謝しています(上位私立大)

・終始丁寧な対応をしてもらった(その他私立大)

 リクルーター・社員で好印象を与えるポイントは、
● 親身、丁寧
● 気さく、包み隠さず
● こまめな連絡、励まし
● 就活アドバイス
● ES添削
――と言えそうです。文系、理系による投票理由の違いはそれほど見られません。

 一方、「印象が良くなかったリクルーター・社員」の理由を見てみると、こんな言葉が多く見られます。
● 不親切
● 学生を見下しているような話し方や態度
● 自慢話ばかり
● 説教をされた
● 説明不足
● やる気のない感じ

 セミナーや会社説明会で登壇する社員やリクルーターだけでなく、セミナーの受付や運営に携わる社員、さらには電話対応を担当する社員までも学生からはよくチェックされています。今一度、今年の採用活動を振り返ってみる必要がありそうですね。

話しやすい雰囲気作りが大切

 次に、「印象の良かった面接官のいた会社」についても文理別の学生のコメントを見てみましょう。まずは文系のランキングです[図表3]

[図表3] 印象の良い面接官がいた会社(文系)

順位 企業名 票数
1 みずほフィナンシャルグループ 19
2 東京海上日動火災保険 10
3 JTBグループ 9
3 三井住友銀行 9
3 全日本空輸(ANA) 9
3 第一生命保険 9
3 日本郵政グループ 9
8 楽天 8
8 三菱商事 8
8 損害保険ジャパン日本興亜 8

[1位]みずほフィナンシャルグループ

・面接後、質問した際にとても親切に答えてくださり、入行前と後のギャップをなくそうという姿勢を感じた(中堅私立大)

・しっかりこちら側の話を聞いてくださり、かつ、私が将来やりたい仕事について、熱くお話をしてくださった(早慶クラス)

・応募者も多い中で、しっかりと一人一人と向き合っていることが伝わった。他のメガバンクと比べて面接官の質も高いと感じた(早慶クラス)

・優しい人が多かった。話をきちんと聞いてアドバイスをくれた(上位私立大)

・実際に話をする中で人柄や今までの活動から得た力を正当に評価していただけた(その他私立大)

[2位]東京海上日動火災保険

・学生のことを本気で知りたいと考えていたから。圧迫面接もなかった(上位私立大)

・自分の話を聞こうとしてくれた印象が強かった(上位国公立大)

・どんな話も真剣にニコニコと聞いてくれた(上位国公立大)

・初めての面接で非常に緊張したが、話しやすい雰囲気を作ってくださった(旧帝大クラス)

・フィードバックがすごく参考になった(その地国公立大)

[3位]JTBグループ

・学生の本質を知ろうとした質問が多く感じたからです。緊張しても笑わせてくれたり、面接がしやすいように考慮していただけたことが良い印象として残っています(中堅私立大)

・断トツで印象が良かった。面接官が笑顔でしっかり話を聞いてくれた。他社と引き離してどこよりも良い対応だったと思う(その他私立大学)

・話を聞いてくれている姿勢が良かったので話しやすい環境だった(中堅私立大)

・優しくて、笑顔でいろいろと話してくれた(早慶クラス)

[3位]三井住友銀行

・1次面接通過の電話連絡の際、電話をくれた社員の方が、「面接官があなたの明るくハキハキ話しているところがとても良かったと言っていましたよ」と褒めてくれてとてもうれしかった(中堅私立大)

・すごく話しやすい雰囲気を作ってくれたから。また、毎回フィードバックがあった(その他私立大)

・良いところをきちんと褒めてくれた(上位私立大)

[3位]全日本空輸(ANA)

・こちらの緊張をほぐしてくださる接し方で、とても親身になって聞いてくださいました(中堅私立大)

・役員クラスだと偉そうにしているのが大体なのだが、ここは全くの逆であった。緊張していた自分をほぐしてくれたので、とても話しやすかった(その他私立大クラス)

[3位]第一生命保険

・支社長、副支社長ともに笑顔で温かく自分の話を聞いてくれた(上位国公立大)

・こちらからの質問に対して、しっかりと経験を踏まえたアドバイスをしていただけた(早慶クラス)

・話を非常に聞いてくれた。前の面接官からの印象を話してもらえた(上位国公立大)

[3位]日本郵政グループ

・聞きたい項目が明確であり、また聞き取りだけでなくコミュニケーションを図ろうという姿勢が強く感じられた(早慶クラス)

・話しやすいように雰囲気を作ってくれた(中堅私立大)

・和やかだし優しかった(その他私立大)

分かりやすい質問で、いいところを引き出してくれる

 最後に、理系のランキングです[図表4]。ソニーがパナソニックを抜いて、三菱電機と並んでの1位となっています。

[図表4] 印象の良い面接官がいた会社(理系)

順位 企業名 票数
1 ソニー 7
1 三菱電機 7
3 アクセンチュア 5
3 キヤノン 5
3 パナソニック 5
3 味の素 5
7 島津製作所 4
7 東日本旅客鉄道(JR東日本) 4
7 富士通 4
10 カゴメ 3
10 協和発酵バイオ 3
10 三菱重工業 3
10 都築電気 3
10 日本航空(JAL) 3
10 富士重工業 3

[1位]ソニー

・仕事について非常に楽しそうに話していらした(中堅私立大)

・学生が話しやすい雰囲気を作ってくれて、話を芯までよく聞いてくれる(早慶クラス)

・話をしっかり聞いて質問をしてくれた(上位国公立大)

・活発な印象を受けた(早慶クラス)

[1位]三菱電機

・非常に和やかな雰囲気で学生の実力を引き出せるような面接をしていた(旧帝大クラス)

・面接官の人が常に笑顔で、物腰が柔らかかった(上位私立大)

・面接官が自分の意見を引き出してくれた(上位私立大)

・穏やかな人柄だが、自社の技術に誇りを持っており、常に先を見据えている姿勢に感銘を受けた(上位国公立大)

・研究に関してのアドバイスもいただけた(上位国公立大)

・笑顔が多く、リラックスさせてくれた(その他国公立大)

[3位]アクセンチュア

・質問が分かりやすく、こちらからも質問の意図がつかみやすかった。高圧的な面接官が一人もおらず、普段の学生を引き出そうとしていた(上位国公立大)

・逆質問が多く、いろいろな話を気さくにしてくれた。また、マネージャー以上の方々が対応してくれた(中堅私立大)

・会話ベースの面接だった。話していて緊張させない工夫をしてくれた(その他私立大)

[3位]キヤノン

・技術面談での自分の発表内容に、最も真摯(しんし)で技術的な面からの質問があった(その他国公立大)

・学生が話しやすい雰囲気を作ってくれて、学生の理解に努めてくれる(早慶クラス)

[3位]パナソニック

・いいところを引き出そうとしてくれた(その他国公立大)

・「試験」ではなく、人をきちんと見てくれた(その他国公立大)

・しっかりとしていた。終始和やかな雰囲気だった(上位国公立大)

・少し怖かったが、アドバイスなどの意見が的確だった(旧帝大クラス)

[3位]味の素

・話をしっかりと聞いてくれている感じがあり、アドバイスもくれた(旧帝大クラス)

 面接官で好印象を与えるポイントとしては、
● 話をしっかりと聞いてくれる、学生の本質を知ろうとした質問
● 話しやすい雰囲気作り
● 分かりやすい質問
● 笑顔
● フィードバック
――などが挙げられます。

 逆に、「印象が良くなかった面接官」の理由では、
● 圧迫面接
● ESの内容を踏まえていない
● 集団面接での質問の偏り
● 目を合わさない
● マニュアル的質問
● 上から目線
● 態度が悪い(スマホいじり、あくび、靴を脱ぐ等)
● 話をしっかり聞いていない
● 遅刻
● 意図の分からない質問
● 無愛想
――などを挙げる声が多くなっています。中でも「圧迫面接」を挙げる学生は多いようです。企業側が意図した圧迫面接ではなく、学生の受け取り方によるケースも少なくないと思われます。面接官の印象によって、学生の志望度は大きく影響を受けます[図表5]

[図表5] 面接官の印象は志望度に影響したか

 面接は、自社の求める人材か(自社が採用すべき人材か)の見極めであるとともに、学生の志望動機形成の最後の機会でもあることを、面接官全員に認識してもらう必要があります。応募学生の多い企業では、面接は人事部門だけでなく、現場の若手社員や管理職に協力してもらうことも多くなると思います。初めて面接官を務める社員には、面接官トレーニング(研修)を実施することも検討してみてはいかがでしょうか。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
中央大学大学院 戦略経営研究科 客員教授

86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約20年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/