公開日 2016.6.24 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
公正取引委員会・経済産業省との通報制度(こうせいとりひきいいんかい・けいざいさんぎょうしょうとのつうほうせいど)
下請取引の適正化は、下請事業者の経営の安定・健全性を確保する上で重要であるほか、下請け事業者に当たる中小企業等の労働者の労働条件の確保・改善にも資するものといえる。このため厚生労働省では、労働基準監督機関による監督指導結果から、労働基準法24条(賃金の支払い)などの法令違反が認められ、当該違反の背景に親事業者による下請法4条違反(いわゆる「下請けたたき」)のおそれのある事案を把握した場合に、公正取引委員会または経済産業省に当該事案を通報する制度を設け、2008年12月2日から実施している。
その後、2016年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」において、「長時間労働の背景として、親事業者の下請代金法・独占禁止法違反が疑われる場合に、中小企業庁や公正取引委員会に通報する制度を構築し、下請などの取引条件にも踏み込んで長時間労働を是正する仕組みを構築する」とされたことを受けて、労働基準法32条(労働時間)違反等が認められ、当該違反の背景に親事業者による下請法違反または特定荷主による物流特殊指定に該当する独占禁止法19条の違反に該当する行為が存在しているおそれのある事案を把握した場合も、通報の対象とする制度の拡充が行われた。
この制度では、労働基準監督署が事案を把握した都道府県労働局へ、都道府県労働局が厚生労働省へ報告し、厚生労働省本省から、公正取引委員会または経済産業省あてに速やかに通報することとしている。