ダブルケア

公開日 2016.5.13 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

ダブルケア(だぶるけあ)

 子どもの育児と親の介護の二つのケア(世話)が同時期に発生、進行すること。晩婚化、出産年齢の高齢化などの要因により発生するもので、育児、介護を単独で行う場合よりもケアを行う者の精神的、体力的、経済的な負担が大幅に重くなる傾向がある。
 内閣府男女共同参画局が2016年4月に公表した「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」によると、全国でみたダブルケア人口は約25万人と推計され、内訳では女性(約17万人)が男性(約8万人)を約9万人上回っている。このように、ダブルケアは現在、主に「40歳代前半(いわゆる団塊ジュニア世代)」の女性に発生しているとみられているが、将来的には発生する年齢層が広がり、それを行う者の数も増加して、新たな社会問題となることが懸念されている。
 行政は、増加するダブルケアに対処するために、育児、介護の領域をまたいだ、複合的な支援システムを構築していくことが課題となっている。すでに一部の地方自治体や大学などの研究機関では、ダブルケアの実態を調査して、その対策を検討し始めているが、このような動きが急速に広がっていくものと考えられる。
 また、企業の人事管理においては、これまでのように「育児と仕事の両立」あるいは「介護と仕事の両立」を別個の課題と捉えるのではなく、「育児・介護・仕事」の三つの側面を同時に成り立たせる、新たな従業員支援策を講じていくことが求められている。
 このように、ダブルケアは、世代または性的役割分業を前提とした、従来の家族支援では対処しきれない問題を含むものであり、行政および企業は、新たな発想でこの課題の解決に向けた取り組みを行うことが必要である。