患者申出療養

公開日 2016.5.13 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

患者申出療養(かんじゃもうしでりょうよう)

 国内未承認の医薬品の使用などの先進的な医療について、患者からの申出を起点とし、安全性・有効性などを確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにした保険外併用療養の仕組み。2016年度から新たに実施された。この仕組みによれば、「医療機関の申請による評価療養の手続きに比べて、審査期間の大幅な短縮が図られ、先進的な医療を迅速に受けられる」「先進的な医療を、地方でも身近な医療機関で受けられる」などのメリットがあり、難病と闘う患者のニーズに応えることができる。また、厚生労働省は、先進的な医療の実施を通じて、将来的に保険適用につなげるためのデータや科学的根拠を集積することができる。
 患者申出療養を受けるには、患者は、かかりつけの医師など身近な保険医療機関に相談の上、前例がある医療の場合は身近な医療機関へ、前例のない医療の場合は臨床研究中核病院または患者申出療養の窓口機能を有する特定機能病院へ、それぞれ申出を行う。この申請を受けて、前例がある医療の場合は原則として2週間、前例がない医療の場合は原則として6週間で審査が行われ、その後、患者申出療養が実施される。

 患者申出療養を受けた時の費用は、次のように取り扱われる。

(1)未承認薬等(保険診療の対象外)の金額など、「患者申出療養に係る費用」は、患者が全額自己負担する。

(2)「患者申出療養に係る費用」以外の、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われ、各健康保険制度における一部負担金を支払う。

 このように、患者申出療養は、保険外併用療養費制度の一つとして、評価療養、選定療養と並んで位置付けられているものであり、いわゆる「混合診療」を無制限に解禁するものではない。