簡易型確定拠出年金制度

公開日 2015.8.13  深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

簡易型確定拠出年金制度(かんいがたかくていきょしゅつねんきんせいど)

 中小企業(従業員100人以下)を対象として、導入手続きや従業員教育などにかかる事務負担を軽減することにより、従来制度よりも簡単に導入・運用できるようにした確定拠出年金制度。2015年4月3日に国会に提出された「確定拠出年金法等の一部を改正する法律案」に盛り込まれており、法案が成立した場合には、2016年度中に実施される見込みである。
 事業主が拠出した掛金を従業員自身が運用する確定拠出年金は、年金資産の積立不足や事業主の追加拠出が発生しないため、中小企業でも導入しやすい仕組みと考えられてきたが、実際には、導入・運用にかかる事務負担が大きいため、中小企業への普及は進まなかった。行政側は、今後、厚生年金基金の解散が急増するのに備えて、導入・運用にかかる事務負担を軽減した企業年金制度を新たに構築し、基金から脱退した中小企業の受け皿とするとともに、確定拠出年金のさらなる普及を目指すことにしている。
 制度の詳細は、法案成立後に順次決定されていくことになるが、現段階では、次の事項が想定されている。

(1)制度導入時に行政に提出する書類を大幅に簡素化し、書類の作成から提出に至るまでの事務処理を金融機関が実施できるようにする

(2)低額の拠出額の設定や商品提供数の限定等によって、従来の仕組みよりもコストや事務負担を抑えた制度運営を可能とする

(3)従業員に対する投資教育を共同で実施できるようにして、事業主の負担を軽減する

 なお、同改正法案では、これと併せて「個人型確定拠出年金への小規模事業主掛金納付制度(従業員数100人以下の中小企業に限り、個人型確定拠出年金に加入する従業員の拠出に追加して事業主拠出を可能とする仕組み)の創設」や「個人型確定拠出年金について、第3号被保険者や企業年金加入者、公務員等共済加入者も加入可能とすること」等も盛り込まれている。