永井 由美 ながい ゆみ 永井社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
1.高年齢者・障害者雇用状況報告書とは
「高年齢者雇用状況報告書」「障害者雇用状況報告書」とはともに、その報告に用いる所定の様式を指す。提出義務者に該当する事業主[図表1]には、毎年5月下旬ごろに報告用紙が郵送されてくる。
これらの報告書により把握される情報は、行政が各企業に対して必要な助言・指導等を行うための基本情報となる。また、この報告書の集計結果は、毎年11月ごろに厚生労働省から公表(※)される。
※直近の公表結果
[図表1]高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出
区 分 | 高年齢者雇用状況報告書 | 障害者雇用状況報告書 |
提出期限 | 毎年、7月15日(15日が土日祝祭日の場合はその翌日) | |
提出先 | 本社を管轄する公共職業安定所 ※事務の集中化で上記以外を指定される場合もある。 |
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提出義務者 | 企業全体の常用労働者が30人以上規模の事業主 | 企業全体の常用労働者(除外率により除外すべき労働者を控除した数)が50人以上の事業主(民間企業)([図表4]参照) |
根拠条文 | 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年齢者雇用安定法」という)52条1項 | 障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」という)43条7項、障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則8条 |
2.高年齢者雇用状況報告書
[1]高齢者雇用のルール
定年は高年齢者雇用安定法8条・9条で定められている。
雇用報告を提出する際には定年に関する記入内容が適正であるかを確認しておきたい。見直しが必要な場合は就業規則の改正が必要となる(就業規則改正の参考例:「高年齢雇用安定法ガイドブック」P15)。
[図表2]現状の定年制度は適正か?
就業規則の見直しが必要 | 就業規則の見直しは不要 |
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※平成25年3月31日までに、労使協定により継続雇用制度の対象者の基準を定めていた場合は、平成37年3月31日までの間、老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢以上の者に限り、当該基準を引き続き適用できる。
[2]記入例
詳細については、報告用紙に同封されている冊子「高年齢者及び障害者雇用状況報告 記入要領」を参照。
[図表3]高年齢者雇用状況報告書 記入例(クリックして拡大する)
3.障害者雇用状況報告書
[1]障害者雇用のルール
すべての事業主は、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があり、その雇用義務については障害者雇用促進法43条1項で定められている。
この報告をしない場合または虚偽の報告をした場合は、障害者雇用促進法86条1号の規定により罰則(30万円以下の罰金)の対象となる。障害者雇用率の計算方法は以下のとおり。
障害者雇用率=(雇用する障害者数/企業全体の常用労働者数-除外率相当労働者数)×100
[図表4]障害者の法定雇用率
事業主区分 | 法定雇用率(H25.4.1~) | 報告提出義務がある企業 |
民間企業 | 2.0% | 常用労働者50人以上 |
国・地方公共団体等 | 2.3% | 常用労働者43.5人以上 |
都道府県の教育委員会 | 2.2% | 常用労働者45.5人以上 |
[図表5]障害の種類・程度とカウント方法
区 分 | 障害の程度 | 週所定労働時間 | ||
30時間以上 | 20時間以上 30時間未満 |
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身体障害者 | ||||
重度 | 身体障害者手帳の交付を受けており、1、2級または3級の重複障害に該当する者 | 2人 | 1人 | |
重度以外 | 身体障害者手帳の交付を受けており、3~6級または7級の重複障害に該当する者 | 1人 | 0.5人 | |
知的障害者 | ||||
重度 | 以下のいずれかに該当する者
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2人 | 1人 | |
重度以外 | 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、障害者職業センターにより知的障害者と判定されている者 | 1人 | 0.5人 | |
精神障害者 | ― | 以下のいずれかに該当する者
|
1人 | 0.5人 |
[2]記入例
詳細については、報告用紙に同封されている冊子「高年齢者及び障害者雇用状況報告 記入要領」を参照。表中の計算については後掲[3]で具体的に説明する。
[図表6]障害者雇用状況報告書 記入例(クリックして拡大する)
[3]計算方法
障害者雇用状況報告の計算について具体例を以下に示す。 エクセル様式(数式入り)もあるので利用してもよい。
[図表7]計算例(クリックして拡大する)
4.電子申請
ユーザーID、パスワードは報告書に同封の「提出方法のご案内」に記載してある。
申請方法については、高年齢者雇用状況報告についてはこちら、障害者雇用状況報告についてはこちらを参照。
5.高年齢者および障害者雇用状況報告におけるチェックポイント
永井 由美 ながい ゆみ 平成18年永井社会保険労務士事務所開業。年金事務所年金相談員、労働基準監督署労災課相談員、雇用均等室セクシャルハラスメント相談員、両立支援コーディネーターの経験を活かして、講師、年金相談、労務管理を中心に活動中。親の介護を通じて介護保険に興味を持ち、千葉市の介護保険関係審議会委員(平成19~22年度)を務める。著書「社労士業務必携マニュアル」(共著・日本法令) |
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