合理的配慮指針

公開日 2015.4.10 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

合理的配慮指針(ごうりてきはいりょししん)

 2016年4月の改正障害者雇用促進法の施行に向けて、改正法36条の2から36条の4までの規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な事項について定めたもの。正式名称は「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」で、2015年3月25日に厚生労働省が発表した(平27.3.25 厚労告117)。
 すべての事業主は、労働者の募集および採用に当たり障害者からの申し出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならず、また、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない(ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない)ことを定めている。
 この指針においては、例えば、募集および採用時の合理的配慮として、「募集内容について音声等で提供すること(視覚障害)」や「面接を筆談等により行うこと(聴覚・言語障害)」 など、多くの事業主が対応できると考えられる措置の例を挙げている。
 なお、合理的配慮に関する基本的な考え方は、次のとおりである。 

(1)合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべき性質のものであること

(2)合理的配慮の提供は事業主の義務であるが、採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われないこと

(3)過重な負担にならない範囲で、職場において支障となっている事情等を改善する合理的配慮に係る措置が複数あるとき、事業主が、障害者との話し合いの下、その意向を十分に尊重した上で、より提供しやすい措置を講ずることは差し支えないこと。また、障害者が希望する合理的配慮に係る措置が過重な負担であるとき、事業主は、当該障害者との話し合いの下、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で合理的配慮に係る措置を講ずること

(4)合理的配慮の提供が円滑になされるようにするという観点を踏まえ、障害者も共に働く一人の労働者であるとの認識の下、事業主や同じ職場で働く者が障害の特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが重要であること