「Thinkers 50」は、マネジメント思想を調査、ランク付けした上で世に広く紹介する取り組みで、2001年以降隔年でランキングが発表されています。当シリーズは、「Thinkers 50」にランクインした経営思想家を、本人に直接インタビューした内容とともに紹介し、ジャンル別に分けてそれぞれ一冊に要約した入門書です。本書「リーダーシップ」は、「マネジメント」「ストラテジー」「イノベーション」に続くシリーズ第4弾になります。
第2章では『リーダーシップの王道』の著者故ウォレン・ベニスの思想を、本人へのインタビューを中心に紹介していますが、その中でベニスは、「クルーシブル(厳しい試練)」がリーダーを作ることを強調しています。そして、今の若いリーダーにとって難しいのは、クルーシブルがめったに存在しないことであり、次世代のリーダーは自分でそれを見つけねばならないとしています。
第3章では、『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』の著者ジム・コリンズが、企業を「まあまあ良い」水準から「偉大」な水準に飛躍させる「レベル5 リーダーシップ」とは何かを語り、レベル5のリーダーとは、謙虚さと強い意志を持った「物静かなリーダー」であるとしています。
第4章では、『なぜ、あなたがリーダーなのか?』の共著者ロバート・ゴーフィーとガレス・ジョーンズが、自分らしいリーダーシップとは何かを語り、それは自分がすでに保有している資質を最大限に活用するものであって、他の成功したリーダーのスタイルをまねるものではないとしています。
第5章では、カリスマとリーダーの関係について考察するとともに、『カリスマCEOの呪縛』の著者ラケシュ・クラナや、『名経営者が、なぜ失敗するのか?』の著者シドニー・フィンケルシュタインとの対話を通して、カリスマは現在では、リーダーとして効果的特性なのか疑問視されているとしています。
第6章では、フォロワーについての研究の歩みを概観し、フォロワーの類型を再整理するとともに、『フォロワーシップ』(未訳)の著者バーバラ・ケラーマン、『経営の未来』の著者ゲーリー・ハメルへのインタビューを行っています。ケラーマンは、フォロワーを孤立者・傍観者・参加者・活動家・硬骨漢の五つのタイプに分けるとともに、フォロワーが権力と影響力を拡大する一方で、リーダーはそれらを失いつつあるとも主張しています。
第7章では、『トータル・リーダーシップ』の著者スチュワート・フリードマンとの対話を通して、リーダーシップは企業や組織の中だけにあるのではなく、人生のそれ以外の部分とも重なり合い、影響を与えるとし、仕事とプライベートな生活のバランスをとるトータル・リーダーシップという考えが紹介されています。
第8章では、現場で活用できるリーダーシップについて考察するとともに、『リーダーシップ・マスター』の共著者マーシャル・ゴールドスミスに、リーダーシップの実践的な側面についてインタビューしています。
以上のように、リーダーシップに関する代表的な考えと論者を紹介しながらも、インタビュー構成が一定比重を占めるため、リーダーシップ研究の最近の歩みを、単なる項目主義ではなく、シズル感を抱きつつ概観できるのがメリットでしょうか。興味を持たれた経営思想家がいれば、その著書に読み進むとよいかと思います。
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※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2014年12月にご紹介したものです。
和田泰明 わだ やすあき
和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士
1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー