クロスアポイントメント制度

公開日 2015.1.19 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

クロスアポイントメント制度(くろすあぽいんとめんとせいど)

 研究者などが、大学、公的研究機関、企業等の中で、二つ以上の機関に雇用されつつ、一定のエフォート(研究等にかける時間の配分)管理の下で、それぞれの機関における役割に応じて研究・開発および教育に従事することを可能とする制度。
 優秀な研究者等が組織の壁を越えて活躍できる「技術の橋渡し機能」を強化することを狙いとするもので、「『日本再興戦略』改訂2014」(2014年6月24日閣議決定)や「科学技術イノベーション総合戦略2014」(同日閣議決定)等においても、クロスアポイントメント制度の積極的な導入・活用の必要性がうたわれている。

 経済産業省と文部科学省が取りまとめた「クロスアポイントメント制度の基本的枠組と留意点」(2014年12月26日)では、そのポイントが、次のとおり整理されている

(1)「在籍型出向」形態によりクロスアポイントメントを実施することが可能である

(2)研究者等が在籍する機関の間で締結する「出向に係る取り決め」の中に、クロスアポイントメントに係る条項(出向元と出向先での業務従事割合、給与支給方法等に係る条項等)を盛り込むことが必要である

(3)給与を一括して出向元または出向先機関から支払うことにより、給与支払機関の医療保険や年金等を適用することが可能となる

(4)出向元機関が研究者等に出向を命じるには、対象者の個別的な同意を得る、または出向先での賃金・労働条件、出向期間、復帰の仕方などが就業規則等によって労働者の利益に配慮して整備されている必要がある

(5)出向元と出向先の関係、出向の目的が明確に整理されており、その内容が労働者供給事業とは合理的に区別されるものであること、および、賃金または賃金相当額等の資金の流れが明確化されていることが必要である

 なお、公務員型の研究機関については、兼業が禁止されているため、在籍型出向形態によるクロスアポイントメントを実施することはできない。