永井 由美 ながい ゆみ 永井社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
1.協会けんぽの健康保険被扶養者資格の再確認
[1]協会けんぽの健康保険被扶養者資格の再確認とは
毎年、協会けんぽでは健康保険法施行規則50条に基づき、健康保険の被扶養者がその状況にあるかどうかを定期的に再確認し、就職や一定の収入を超えた場合など被扶養者の条件に該当しなくなった者の削除の届け出が提出されているかを確認する。
高齢者の医療費は税金、本人負担のほかに各医療保険制度から拠出することになっており、その拠出金は医療保険制度の加入者(被保険者および被扶養者)の人数に応じて算出され、保険料の軽減につながる重要な事務となるので正しく手続きを行いたい(参考:平成26年再確認の結果)。
以下、協会けんぽの健康保険被扶養者資格の再確認手続きの概略と実務上のチェックポイントについて、図表や記載例を交えながら解説する(詳細については全国健康保険協会HPを参照されたい)。
[2]再確認の流れ
毎年5月末から6月下旬頃にかけて、協会けんぽから事業所に次の4点が送付される。
①「被扶養者状況リスト(正・副)」(2枚複写:1枚目協会けんぽ提出用、2枚目事業主控)
②「説明用リーフレット」(被扶養者資格の再確認方法やリストの記入方法等についての案内)
③「被扶養者調書兼異動届(正・副)」(2枚複写[白紙・削除専用])
④「返信用封筒」(協会けんぽが設置する再確認専用私書箱宛)
事業所では被扶養者が現在も被扶養者の条件に該当するかどうか再確認して、7月末日までに協会けんぽに回答する。
[図表1]再確認書類の流れ
[3]再確認の方法
口頭または文書にて健康保険の被保険者要件(詳細はこちら)を満たしているか確認する。ただし、所得税法上の控除対象配偶者または扶養親族であることが確認された場合は、再確認を省略してもよい。
再確認のための文書例「健康保険被扶養者資格再確認調査票」が協会けんぽのHP上で公開されているので利用するとよい。
[図表2]被扶養者の範囲と条件
区 分 | 必要な条件 | ||
被扶養者の範囲 | 世 帯 | 生計維持関係 | |
年間収入(金額以外) | 年間収入(金額) | ||
|
同一でない | 被保険者からの仕送り(援助)額より少ない | 130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満) |
同一である | 被保険者の2分の1未満(2分の1以上であっても、被保険者の年収を上回らない場合で、被保険者が生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは被扶養者と認めることもある) | ||
|
同一である(同一でないと扶養になることはできない) |
[4]被扶養者状況リストの記入方法
被扶養者ごとに該当する欄にチェックをする。
ただし、備考欄に「確認不要」とある者についてはチェック不要(詳細は被扶養者状況リスト送付時に同封されている「被扶養者状況リストによる被扶養者資格の再確認と提出のお願い」3ページ参照)。
[図表3]被扶養者状況リスト記入と提出物
[5]健康保険被扶養者調書兼異動届(削除用)
今回の再確認の結果、削除となる者については、被保険者ごとに「健康保険被扶養者調書兼異動届(削除用)」を作成し、正・副ともに提出する。
「副」は協会けんぽから管轄する年金事務所に提出され、その年金事務所から事業所に返送される。
被保険者の署名または押印が必要になるので、再確認の際に署名または押印を忘れないようにすること。
[図表4]【協会けんぽ被扶養者資格再確認専用】健康保険被扶養者調書兼異動届(削除用)記載例
2.チェックポイント
被扶養者状況リストは届いているか?
すべての被扶養者が平成27年4月1日において18歳未満または平成27年4月1日以降に被扶養者認定を受けた場合は被扶養者状況リストが送付されない。
7月末日の提出期限に間に合うように、被保険者に対して被扶養者の確認をしているか?
健康保険被扶養者調書兼異動届は被保険者ごとに作成し、被保険者の署名または記名押印はしてあるか?
3.Q&A
Q1 現在、被扶養者に認定されていて被扶養者状況リストに載っていない者がいますが、追記したほうがよいですか?
A1 記載されていない方を追記する必要はありません。リストは平成27年5月14日現在の認定者を載せているため、平成27年5月15日以降に認定処理された方が載っていないと思われます。
Q2 扶養者状況リストの氏名や続柄等で変更したい箇所があります。どうしたらよいでしょうか?
A2 氏名訂正などは管轄の年金事務所へ別途「健康保険被扶養者(異動)届」を提出してください(記入例はこちら)。
Q3 「健康保険被扶養者(異動)届」を今回の再確認用の封筒に同封してもよいですか?
A3 被扶養者資格の再確認専用の封筒なので、「被扶養者状況リスト(正)」「被扶養者調書兼異動届(正・副)」以外は送付できません。別途、管轄の年金事務所に提出してください。
Q4 削除者の被保険者証が添付できない場合は「被保険者証回収不能・滅失届」の提出も必要ですか?
A4 「被保険者証回収不能・滅失届」提出は不要です。「健康保険被扶養者調書兼異動届」裏面記入例を参考に添付できない理由を記入すれば問題ありません。
Q5 削除後に国民年金・国民健康保険に加入する者がいます。加入時に必要なので「被扶養者調書兼異動届」の控えを早く欲しいのですが、どうしたらよいのでしょうか?
A5 「被扶養者調書兼異動届」は協会けんぽを経由して管轄の年金事務所から送付されるため返送まで1カ月程度かかります。
お急ぎの場合は管轄の年金事務所に直接提出してください。なお、この場合は被扶養者状況リストの「□届出済」にチェックしてください。
Q6 被扶養者データをダウンロードする方法を教えてください。
A6 協会けんぽHPからダウンロードできます。ただし、協会けんぽからユーザID・パスワードの交付を受ける必要があります(詳しくはこちら)。
永井 由美 ながい ゆみ 平成18年永井社会保険労務士事務所開業。年金事務所年金相談員、労働基準監督署労災課相談員、雇用均等室セクシャルハラスメント相談員、両立支援コーディネーターの経験を活かして、講師、年金相談、労務管理を中心に活動中。親の介護を通じて介護保険に興味を持ち、千葉市の介護保険関係審議会委員(平成19~22年度)を務める。著書「社労士業務必携マニュアル」(共著・日本法令) |
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