脳・心臓疾患の労災認定基準

公開日 2014.8.12 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

脳・心臓疾患の労災認定基準(のう・しんぞうしっかんのろうさいにんていきじゅん)

 脳・心臓疾患を労災認定する上での基本的な考え方、対象疾病、認定要件を示したもの。対象疾病は、脳血管疾患(脳内出血[脳出血]、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症)と虚血性心疾患等(心筋梗塞、狭心症、心停止[心臓制突然死を含む]、解離性大動脈瘤)で、これらが、業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した場合は、業務上の疾病として取り扱うこととしている。
 具体的には、次の3要件の点のいずれかに該当するかどうかが、労災認定の判断基準とされる。

(1)異常な出来事
 発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的および場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと。異常な出来事とは「極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的または予測困難な異常な事態」「緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的または予測困難な異常な事態」「急激で著しい作業環境の変化」をいう。
(2)短期間の過重業務
 発症に近接した時期(発症前おおむね1週間)において、特に過重な業務に就労したこと。過重な業務に該当するか否かは、「労働時間、不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、交替制勤務・深夜勤務、作業環境(温度環境・騒音・時差)、精神的緊張を伴う業務」の負荷要因を考慮して、客観的かつ総合的に判断される。
(3)長期間の過重業務
 発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと。過重な業務に該当するか否かは、(2)と同じ負荷要因から考慮されるが、このうち労働時間については、次の評価の目安が定められている。

①発症前1カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること
②発症前1カ月間におおむね100時間または発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること