多様な正社員

公開日 2014.8.12 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

多様な正社員(たようなせいしゃいん)

 いわゆる「正社員」と並立しながら、働き方等に関して一定の限定を設けた正社員雇用の仕組みを指し、その定義は必ずしも一様ではないが、厚生労働省に設置された「非正規雇用のビジョンに関する懇談会」(2011年6月~2012年3月)では、無期雇用、フルタイム勤務、直接雇用の3要件をすべて満たす労働者(いわゆる「正社員」)のうち、職務 、勤務地、労働時間のいずれかが限定的である者としている。
 従来、日本企業は、無期雇用で、職務や勤務地が限定されておらず、相対的に賃金が高い「正社員」と、その逆の「非正規雇用の労働者」とに二極化する傾向が見られたが、近年、次の要因により、両者の中間的な働き方に対するニーズが高まってきた。

(1)ワーク・ライフ・バランスに対する意識が高まる中で、勤務地や労働時間を限定して働きたいという希望をもつ正社員が増えたこと
(2)2013年に施行された改正労働契約法が定める有期契約5年超過後の無期転換ルールにより、賃金などの処遇は有期契約時のものを継続しつつ、無期雇用の契約を締結する労働者の出現が見込まれること
(3)企業や労働者の間に、「職務や勤務地等が限定される正社員を、他の正社員と同じ処遇とすることは合理的ではない」という考え方が広がってきたこと


 2011年に厚生労働省の「『多様な形態による正社員』」に関する研究会」が行った調査によると、「多様な形態による正社員」の雇用区分を導入している企業の割合は約5割で、そのうち職種限定の区分は約9割、勤務地限定の区分は約4割、労働時間限定の区分は約1~2割となっている。
 厚生労働省は、「日本再興戦略」などを踏まえ、2013年9月から「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会を設置し、2014年7月にその報告書を公表した。同省は、今後も、企業における多様な正社員の円滑な導入、運用を促進する取り組みを行うこととしている。