(中央職業能力開発協会 社会保険研究所 2014年2月)
今回は、ビジネス・キャリア検定試験の標準テキストとして、先ごろ第2版が発刊された2冊の本をご紹介します。
「ビジネス・キャリア検定試験」は、事務系職種のビジネス・パーソンを対象として平成6年(1994年)にスタートした、中央職業能力開発協会(JAVADA)が実施する公的資格試験です。事務系職業の労働者に求められる能力の高度化に対処するために、段階的・計画的に自らの職業能力の習得を支援し、キャリアアップのための職業能力の客観的な証明を行うことを目的としています。
分かりやすく言えば、同じくJAVADAが実施する「技能検定」の"ホワイトカラー版"といったところでしょうか。検定分野は「人事・人材開発・労務管理」「企業法務・総務」など8分野に区分され、その中に「人事・人材開発」「労務管理」「企業法務」「総務」など18部門(2級の場合)があり、2級と3級の試験がそれぞれ年2回実施されています。
本書は「人事・人材開発」部門の2級と3級の標準テキストの改定版です。「2級」は課長・マネジャー等を目指す人またはシニアスタッフを対象とし、「3級」は係長・リーダー等を目指す人または新入社員等担当職務を的確に遂行することを目的とする人を対象としているとのことです。直近の試験問題と解答は「ビジネス・キャリア検定」のサイトで確認することができます。
旧版(平成19年刊行)と比較すると、人事・人材開発の最近のトレンドを一部織り込むとともに、近年の労働法等の法改正にも対応させ、労働経済データなども必要に応じて新しいものに差し替えられています。また、2級テキストの章立ては、人事企画、雇用管理、賃金管理、人材開発、3級テキストは、人事企画の概要、雇用管理の概要、賃金・社会保険の概要、人材開発の概要と、各4章立ての構成です。2級が6章、3級が11章もあった旧版よりすっきりした構成となっているとともに、試験の出題要領により即した区分となっています。
試験の問題は、単に基礎知識を問うだけでなく、実務に即した性質の問題を指向しており、テキストの内容から一歩踏み込んだ専門知識問題や、相応の実務センスが求められる応用問題なども一部含まれています。ただ、合格基準は「正答率概ね60%以上」とされていることから、まずはテキストの内容を理解することが基本かと思われます。今現在「人事・人材開発」の業務に携わっている人であれば、テキストを十分に読み込んでいれば、試験に合格するのはそう難しくないかと考えます。
企業によってはすでに社内の「公的資格制度」や「昇格試験制度」に当試験制度を織り込んで、社員に対して受験を奨励したり義務づけたりしている例もあるかと思われますが、そうでない企業の人事パーソンであっても、自らの自己啓発のために本テキストを読んでみるのもよいのではないでしょうか。あるいは、人事スタッフに人事の基本を学ばせるために読むことを勧めるのもよいかと思います。試験の受験・合格を目標にすれば、習得効果はより高まるものと思われます。お薦めです。
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※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2014年3月にご紹介したものです
和田泰明 わだ やすあき
和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士
1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー