職務発明制度

公開日 2014.4.10 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

職務発明制度(しょくむはつめいせいど)

 従業員などが職務を遂行する中で行った発明の取り扱いに関する制度で、特許法35条において定められている。
 職務発明が活発に行われるようにするためには、企業などが研究開発活動に積極的に投資する環境を整備することとともに、職務発明を行った従業員などに適切な報酬が支払われることを保障して発明に対するインセンティブを喚起することが必要である。ここで、職務発明について企業と従業員との間で利害の対立が生じる可能性があることから、その調整を図るため、1959年の特許法改正において次のことが定められた。

  1. 職務発明に関する「特許を受ける権利」や「特許権」は、原則として、発明者である従業員に帰属する
  2. 従業員が特許権を使用者に承継させた場合、または専用実施権を使用者に設定した場合などは、相当の対価の支払いを受ける権利が生じる
  3. 職務発明の対価の額は、その発明により使用者が受けるべき利益の額、および使用者の発明への貢献の程度を考慮して定めなければならない。

 2000年頃には、元従業員が、過去に勤務していた会社に対して職務発明の対価の支払いを求める訴訟が相次いで発生したため、2004年の特許法改正では、「契約、勤務規則などで職務発明の対価を定める場合は、対価を決定するための基準の策定に際して使用者と従業員との間で行われる協議の状況などを考慮して、不合理と認められるものであってはならないこと」や「職務発明の対価は、従業員の処遇なども広く考慮した上で算定すること」が、職務発明に関する定めに新たに追加された。
 2014年3月には、特許庁に設置されている産業構造審議会知的財産分科会において、職務発明制度の見直しについて取り上げられ、「職務発明に関わる特許権を企業などに帰属させること」や「職務発明に対する報奨金規定の作成を企業に義務付けること」の是非について検討を行う動きがある。