公開日 2013.12.12 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・ 社会保険労務士)
中小企業退職金共済制度(ちゅうしょうきぎょうたいしょくきんきょうさいせいど)
中小企業退職金共済法に基づき、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(以下「機構」と略)が運営する、中小企業のための退職金制度。中小企業が単独では退職金制度をもつことが困難である実情を考慮し、中小企業者の相互扶助の精神と国の援助で退職金制度を確立したもので、その概要は、次のとおり。
(1)中小企業事業主が機構との間で、雇用する従業員を対象にした「退職金共済契約」を締結する。なお、従業員の全員加入を原則とする。(ただし、期間を定めて雇われている者や試みの雇用期間中、休職期間中の者などを除く)
(2)事業主は、従業員ごとに定めた掛金月額(5000~3万円。ただし、短時間労働者は2000~4000円も選択可能)を金融機関に納付する。なお、掛金は全額事業主負担となる。
(3)従業員の退職時には、機構から退職者本人に退職金が直接支払われる。なお、従業員は、退職時に「一時金払い」で受け取る以外にも、退職日に60歳以上で一定の条件を満たせば、5年間または10年間で支払う「全額分割払い」や「一部分割払い」を選択することも可能。
事業主は、従業員の退職金にかかる費用負担を平準化できるうえに、加入後4カ月目から1年間は国から助成金(掛金月額の1/2。ただし、従業員ごとに上限5000円)を受けられるなどのメリットがある。一方、従業員は、会社以外の外部機関に原資が積み立てられることにより退職金を確実に受け取れるなどのメリットがある。
1959年の制度開始以来、中小企業の退職金制度の支払い準備形態として広く浸透し、2013年10月末現在、中退共への加入事業所は36万3306カ所、従業員数は約328万人で、運用資産額は約4.2兆円となっている。