障害者の権利に関する条約

公開日 2013.12.12 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・ 社会保険労務士)

障害者の権利に関する条約(しょうがいしゃのけんりにかんするじょうやく)

 障害者の人権や尊厳を守ることを目的とし、障害を理由とするあらゆる差別の禁止などを定めた国際条約。2006年12月に国連総会で採択され、08年5月から発効。13年10月現在、批准国は138カ国となっている。日本は、07年9月に条約に署名した後、障害者の支援・保護に関する国内法令の整備を進め、13年12月に国会で条約締結が承認された。

 この条約の第3条では、次の8項目の一般原則を定めている。

(1)固有の尊厳、個人の自律及び個人の自立を尊重すること
(2)差別されないこと
(3)社会に完全かつ効果的に参加し、及び社会に受け入れられること
(4)人間の多様性及び人間性の一部として、障害者の差異を尊重し、
   及び障害者を受け入れること
(5)機会の均等
(6)施設及びサービスの利用を可能にすること。
(7)男女の平等
(8)障害のある児童の発達しつつある能力を尊重し、及び障害のある児童が
   その同一性を保持する権利を尊重すること

 また、第27条(労働及び雇用)では、条約締結国に対して、「あらゆる形態の雇用に係るすべての事項に関し、障害を理由とする差別を禁止すること」、「他の者と平等に、公正かつ良好な労働条件、安全かつ健康的な作業条件および苦情に対する救済についての障害者の権利を保護すること」 などについて適当な措置をとることを求めている。

 我が国では本条約の批准に向けた対応として、障害者雇用促進法の改正(公布日2013年6月19日)が行われ、改正施行日(2016年4月1日)より、①障害があることを理由とした、雇用における不当な差別的取り扱いの禁止、②施設の整備や援助者の配置など合理的配慮の提供等が義務づけられることとなっている。また、これらに関する苦情申し出について、事業主には自主的解決に務めることが求められるほか、紛争が生じた場合には個別労働紛争解決促進法の特例として都道府県労働局長が必要な助言、指導または勧告を行うことができることとされている。