2013年08月20日掲載

「ポジティブ・オフ」特別調査―企業の休暇取得の実態と改善への課題を探る - 「ポジティブ・オフ」特別調査―企業の休暇取得の実態と改善への課題を探る(8)

 

Chapter7
年休取得改善への取り組みを支援する手だて



 最後に、①年休取得改善への取り組みを自社で進める上で、「きっかけ作り」としてどのようなことが効果的か、②社員に対して積極的に年休を取得・活用してもらえるよう働き掛ける場合、どんな手だてが効果的と考えるか――について尋ねてみた。

[1]年休取得をめぐる現状改善へのきっかけ作り
 経営トップや人事部門、労使、官公庁による施策について六つの設問を設け、自社でのきっかけ作りとして効果的と考えるか否かについて尋ねてみた。ここでも、回答者全体の集計と、年休が「取りづらい企業」の回答を対比して見てみよう[図表12]。
「①効果的と思う」と「②やや効果的と思う」を足し上げた割合で見てみると、上位3 位は「全体」「取りづらい企業」のいずれも以下の三つとなった。
(1)経営トップによる休暇取得促進に向けた社内への決意表明・呼び掛け
  …全体72.1%・1 位、取りづらい企業67.5%・2 位
(2)人事部門による休暇取得をめぐる問題の開示と取り組み方針のアナウンス
  …全体62.0%・2 位、取りづらい企業68.3%・1 位
(3)人事と労組(従業員代表)による問題認識の表明と取り組み方針のアナウンス
  …全体61.1%・3 位、取りづらい企業61.0%・3 位
 「①効果的と思う」の回答に着目すると、「取りづらい企業」は経営トップからの働き掛けによる効果を高く評価しており「経営トップによる休暇と働き方の見直しに向けた社会(社外)への決意表明」の割合(29.3%)は、「全体」の回答(19.0%)を10 ポイント余り上回っている。

[図表12]自社の年休取得をめぐる現状改善へのきっかけ作りとしてどのようなことが効果的か

[2]社員に対して年休の取得・活用を働き掛ける手だて
 社員により積極的に年休を取得・活用してもらえるよう働き掛ける場合、どのような手だてが効果的と思うかを六つの選択肢で尋ねた。ここでも「全体」と「取りづらい企業」を分けて集計してみたが、他の項目と比べて両者の回答の開きは比較的小さいように見受けられる。同じく「①効果的と思う」と「②やや効果的と思う」を足し上げた割合で見ると、上位3 位は「全体」「取りづらい企業」のいずれも以下の三つとなった。
(1)休暇を利用した自己啓発等に対する補助制度を設ける(導入済みの場合は拡充する) 
  …全体53.2%・1 位、取りづらい企業43.9%・2 位
(2)休暇を利用した旅行・宿泊のための費用補助制度を設ける(導入済みの場合は拡充する)
  …全体53.1%・2 位、取りづらい企業51.2%・1 位
(3)休暇時に利用できる宿泊・レジャー等の提携サービスを設ける(導入済みの場合は拡充する)
  …全体38.0%・3 位、取りづらい企業36.6%・3 位
 ここに見るように、休暇取得の費用を直接的に補助する制度に対する支持が比較的高く現れている。「休暇を利用した自己啓発に対する補助制度を設ける」ことと「休暇を利用した旅行・宿泊のための費用補助を設ける」ことについては、効果的と捉える割合が他の手段と比べて高く、特に旅行・宿泊のための費用補助については、「全体」「取りづらい企業」のいずれも、過半数に上っている。社員が旅行等を通じてさまざまな経験をすることが、休暇後の仕事へのプラスの効果に繋がることなども期待できるため、こうした補助の拡充を進めることは企業にもメリットあると言えるだろう。一方、社内報・社内ネットを通じた休暇活用事例の紹介や、会社が主体となって行う趣味の教室・講座などについては、効果的とみる向きがやや少ない。社員に対する訴求度の差もさることながら、事例紹介や趣味講座は、福利制度としてある程度導入が進んでいる各種補助に比べて実施例が比較的少ないことも回答に影響していると思われる。

[図表13]社員により積極的に年休を取得・活用してもらえるよう働き掛けを行う場合、どのような手だてが効果的か

 

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INDEX
Introduction  調査のポイントと目的
Chapter1   企業にとっての休暇取得促進を図るメリット
Chapter2   2011年度の年次有給休暇取得率
Chapter3   人事担当者から見た自社の「年休の取りやすさ」
Chapter4   休暇取得に対する管理職の意識と対応
Chapter5   自社の年休取得についての改善意向
Chapter6   年休取得の改善を図るための取り組み
Chapter7   年休取得改善への取り組みを支援する手だて