2013年08月20日掲載

「ポジティブ・オフ」特別調査―企業の休暇取得の実態と改善への課題を探る - 「ポジティブ・オフ」特別調査―企業の休暇取得の実態と改善への課題を探る(1)

 

Introduction
調査のポイントと目的



労務行政研究所は観光庁が主唱する「ポジティブ・オフ」運動に賛同し、企業における休暇の取得促進と働く人たちのより有意義な休暇活用を推奨する取り組みを支援しています(観光庁「ポジティブ・オフ」運動ホームページはこちら)。

本調査は、観光庁の委託により、休暇の取得・活用を促す取り組みを進める上での課題と、求められる具体策の在り方を探るため、2012年12月にWEBアンケート形式で実施したものです。
社内にまん延している「休みの取りづらさ」の背景を探り、職場で取り組み策を検討・具体化するに当たっての資料の一つとしてご活用いただければ幸いです。

◎ポイント
・自社の「年休の取りやすさ」について、全体の62%が肯定的に回答。一方、「取りづらい」(取りづらい+どちらかというと取りづらい)と答えた人の73%が、その理由に「メンバーの人数不足」を指摘
・年休が「取りづらい」企業では、自ら率先して休む管理職が少なく、部下の休みにも気が回らない傾向が浮き彫りに
・管理職に対して、「年休や特別休暇のルール、計画的な休暇取得」などへの理解を促す機会を設けている企業は32%にとどまる
・自社の年休取得の現状について、「改善すべき」と思っている人は、全体で59%。年休が「取りづらい」企業に限ると76%に上る
・改善への取り組みについて「業務効率化・生産性向上」が47%でトップ(複数回答)
・改善の取り組みへの「きっかけ作り」について、全体の72%が「経営トップによる社内への決意表明」が効果的と回答

■本調査結果を掲載した観光庁発行の小冊子『会社と社員を輝かせる「ポジティブ・オ
 フ」~企業における取組ポイント&事例集』の全ページが観光庁ホームページよりPD
 Fファイルでダウンロードいただけます
  ⇒詳しくはこちらから
■労務行政研究所が「ポジティブ・オフ」運動の一環として取材・紹介した8社の休暇
 取得
・活用策の事例を、ポータルサイト「jin-Jour」にてまとめてご覧いただけます
  ⇒事例記事はこちらから

【調査要領】
調査名:社員の休暇取得・促進の実態と課題に関するアンケート
調査時期:2012 年12 月
調査対象:(財)労務行政研究所のWEB サービス「WEB 労政時報」に利用登録を
     いただいている人事労務担当者8400 人
調査方法:WEB アンケート
集計対象:216 人(1 社1 人)。規模別・産業別の内訳は次表のとおり。

本調査の目的

  • 近年、ワーク・ライフ・バランスの推進や心身の健康の維持・向上、社員の社会貢献支援などを目的として、多くの企業で、年次有給休暇をはじめとする各種休暇制度の整備と利用促進の取り組みが進められている。厚生労働省の「就労条件総合調査」(2012 年)によると、2011 年の労働者1 人平均で見た年休取得率(新規付与分に対する取得割合)は49.3%(前年比1.2 ポイント増)となり、ここ数年わずかながらではあるものの改善傾向が続いている。
  • しかし、諸外国に比べて休暇の取得促進が立ち遅れている状況に大きな変化はなく、その一方、国内ではデフレ不況の長期化による経済活動の低迷、少子高齢化の進展をはじめ、社会の活力向上に影を落とすさまざまな課題が山積している。こうした中で、経済主体である働く個人と企業が将来に向けた成長の力を蓄え、WIN-WIN の関係で発展を目指していくためには、働き方の改革、社員の力を引き出す工夫がより強く求められる。
  • そうした意味では、仕事のオンとオフを効果的に切り替え、生活の充実と仕事の生産性向上を図る意味合いから、休暇の積極的活用も重要なファクターの一つとなろう。観光庁が主唱し、関係省庁と共同で推進している「ポジティブ・オフ」運動は、休暇を軸とするこうした個人と企業の取り組みを後押しし、それを社会の活力アップへと循環させていくことを大きな狙いに置いている。
  • ところで、元来、年休の権利行使は個人の意思に委ねられているが、よい意味でも悪い意味でも「個人任せ」となっているケースが少なくないと思われる。例えば仕事量に対する人員数やスケジュール、職場内の慣行やマネジメントの実情、達成すべき目標や役割、さらには自分自身の家庭事情等の必要性など、自分を取り巻く状況を斟酌し、いずれにもマイナス影響を及ぼさない範囲で判断を下すことが「休みを取る者」の責任として負わされているわけだ。
  • こうした事情は年休のみならず、他の自由利用が可能な休暇制度や、法が定める各種休職制度の利用に関しても共通する。いわば、“ 取れる範囲の最低限の休暇取得” が定着しているのが現状と思われ、「必要な休みさえ取れれば、“ 休みが取りづらい” とは感じない」という意識にもつながっているかもしれない。
  • しかし、企業と個人の双方にとって、休暇の活用がよりメリットのあるものと実感できる形に改めていくためには、とりわけ企業側からの積極的な環境整備と動機づけがより求められると思われる。先に事例紹介した8 社では、すでにそれぞれの狙い・視点から環境整備の取り組みが進められているが、全体を俯瞰してみると次のような点が重要なポイントと考えられる。
    ①経営トップによる働き方の見直し、風土改革へのコミットメント
    ②現場管理職による業務計画の“ 見える化” と推進体制の確立
    ③職場メンバー間のコミュニケーションの充実とフォロー意識の醸成
    ④休暇取得に気兼ねを感じない環境づくりと各人の意識改革
  • 今回の調査では、上記のポイントを検証する視点から、「休暇の取りやすさ(取りづらさ)」の実情と、それをもたらすプラス・マイナスの要因、管理職の意識・対応の実情、休暇の取得・活用を促すきっかけ作りおよび具体策としてどのような取り組みが有効か、といった点について、各社の現状と人事担当者の考えを尋ねてみた。

 

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INDEX
Introduction  調査のポイントと目的

Chapter1   企業にとっての休暇取得促進を図るメリット
Chapter2   2011年度の年次有給休暇取得率
Chapter3   人事担当者から見た自社の「年休の取りやすさ」
Chapter4   休暇取得に対する管理職の意識と対応
Chapter5   自社の年休取得についての改善意向
Chapter6   年休取得の改善を図るための取り組み
Chapter7   年休取得改善への取り組みを支援する手だて