公開日 2013.7.22 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・ 社会保険労務士)
期待理論(きたいりろん)
「打算的で合理的な人間」を想定し、「目標が達成できる」あるいは「報酬を得られる」という期待などがモチベーションを高めるプロセスをモデル化して捉えようとするモチベーション理論。
期待理論を最初に提唱したとされるビクター・ブルームは、モチベーションの強さは「期待と誘意性の積の総和」で決まるものとした。ここでいう「期待」とは「特定の行為からある結果が得られると信じている主観的な確率」を、また「誘意性」とは「ある行為がもたらす報酬の魅力」を指す。なお、上記の要素に加えて、「道具性(1次的な結果と最終的な結果との関連性)」もモチベーションに影響を及ぼすとした。
レイマン・ポーターとエドワード・ローラー3世は、ブルームの期待理論を修正し、次のようにモデル化した。
(1)報酬の価値と報酬が得られる確率で、投入する「努力の大きさ」が決まる
(2)努力の大きさによって、目標達成時に得られる「業績の大きさ」が決定する
(3)業績の大きさによって、得られる「報酬の大きさ」が決定する。
(4)報酬の大きさによって、「満足の大きさ」が決定する。
そして、「満足の大きさ」によってモチベーションが影響を受け、さらに、「満足の大きさ」と「業績、報酬の関係性」がフィードバックされて、新たなことに取り組むときの「努力の大きさ」が決まるものとした。
期待理論には、「人間の思考を合理的に捉えすぎている」「内発的な動機づけを軽視している」等の批判があるものの、動機づけのプロセスをモデル化したことは、その後のモチベーション研究や人事管理に大きな影響を与えることになり、その功績は広く認められている。