公開日 2013.3.5 深瀬勝範(社会保険労務士、人事コンサルタント)
追い出し部屋(おいだしべや)
2012年12月に、業績低迷に直面している大手製造業企業などで、従業員を特定の部署に異動させて他部署の応援と称する単純作業や雑用に従事させたり、転職を勧めている実態があるという新聞報道から、事実上の退職強要につながっているのではないかという問題が社会的にクローズアップされた。同部署への異動は新しい担当への再配置等が目的とされながら、実際には再配置された従業員より多くの者が退職しているなどの報道内容から、その部署を指した記事中の「追い出し部屋」という言葉が世間に広がる形となった。
これを問題視した厚生労働省は、翌13年1月に「追い出し部屋」報道の記事中に挙がった企業を対象として「退職強要の有無等に関する調査」を実施。その結果として、「従前よりも軽易な作業を行う部署に従業員を異動させた事例は見受けられたが、退職強要につながる事実は確認できなかった」と公表した。このように追い出し部屋の存在は否定しながらも、「やむなく労働条件の変更や雇用調整を行わざるを得ない場合であっても、法令や労使間で定めたルールを遵守することはもちろん、事前に十分な話し合いを労使で行うことや、お互いの信頼関係や尊厳を損ねる方法を避けること」を調査対象となった各社に求め、あらためて啓発指導を行っている。