労働審判制度

公開日 2012.10.○ 深瀬勝範(社会保険労務士、人事コンサルタント)

労働審判制度(ろうどうしんぱんせいど)

 個々の労働者と事業主との間に生じた労働関係に関する紛争を、裁判所において迅速、適正かつ実効的に解決することを目的として設けられた制度。労働審判法の施行に伴い、2006年4月から始まった。

 労働審判手続は、地方裁判所において行われる。そこでは、紛争当事者からの申し立てを受けて、裁判官である労働審判官1名と、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名とで組織する労働審判委員会が審理し、適宜調停を試み、調停がまとまらなければ紛争解決のための判断(労働審判)を行う。なお、審理は、迅速化を図るために、原則として3回以内の期日で終結するものとしている。

 労働審判は、当事者から異議の申し立てがなされなければ、裁判上の和解と同一の効力を有する。異議の申し立てがなされた場合には、労働審判手続の申し立てのときに、労働審判がなされた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされ、訴訟に移行する。

 最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(第4回)によれば、2010年に労働審判として新たに受け付けた件数は3375件で、また、同年の既済事件(3436件)のうち、70.8%(2433件)が調停成立により、17.9%(614件)が労働審判により終局した。また、労働審判で終局した事件のうち、異議申し立てがあり訴訟に移行したものは365件であった。なお、労働審判事件の平均審理期間は71.6日となっており、審理の迅速化にも効果があったものと捉えられている。