代行返上

公開日 2012.08.29 深瀬勝範(社会保険労務士、人事コンサルタント)

代行返上(だいこうへんじょう)

 厚生年金基金が、老齢厚生年金の給付の一部の支払い業務(代行部分)を国に返上すること。

 1990年代後半、低金利状態が続いていたため、多くの厚生年金基金において、代行部分の運用が予定通りに進まず、支払い原資の積み立て不足が発生した。この積み立て不足については、基金に加入する企業が負担しなければならず、その負担額が膨らんでいく中で、企業側から代行部分の国への返上を希望する声が高まり、2002年4月1日の確定給付企業年金法の施行により、これが認められることになった。

 代行返上を行うときには、基金の代議員会の定数の4 分の3 以上の多数による議決や、事業主、加入者の4 分の3 以上の同意などが必要になる。

 なお、代行返上は、通常、「将来期間分の代行部分の支払い義務停止(将来返上)」と「過去期間分の代行部分の支払い義務停止(過去返上)」の2段階に分けて行われるが、過去返上を行うときに、基金は、代行部分の過去期間分に係る積立金(最低責任準備金相当額)を国に納付しなければならない。また、基金独自の上乗せ給付であるプラスアルファ部分については、確定給付企業年金に移行するなどの処理が行われる。

 代行返上を行った場合、その基金は、消滅または解散したものとみなされる。

 2012年8月1日現在、代行返上(将来返上)を行った基金数は904、うち、過去返上を行った基金数は839となっている。(企業年金連合会調べ)