東洋経済新報社 2012年2月
医薬品会社ノバルディス ファーマの現社長である著者が、グローバルで通用するリーダーシップとは何か、経営にとっていかに人材を育成していくことが重要であるかを語るとともに、とりわけ若い世代に向けて、自分の能力と可能性を信じ、失敗を恐れず挑戦せよと訴えかけた本です。
著者は、東京大学工学部を卒業後、川崎製鉄(現JFEスチール)に入社し、在職中に米国留学を経験した後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)を経て、日本ゼネラル・エレクトリック(GE)へ転職、GEの航空機エンジン北アジア地域社長などを務めた後に現職にあるとのことで、あまりの華々しい経歴に、読む前から少し引いてしまいそう――。
しかし、実際に本書を読んでみると、灘高校からの東大受験に一度失敗し、希望していた商社への就職にも失敗するなど、キャリアのスタートからずっと順風満帆に歩んできたわけでないようです。それでも常に経営に携わりたいという気持ちを持ち続け、現状に安住せず、自らの洞察力と努力でキャリアを切り拓いてきたことが分かります。
東京へ出てきたとき、米国留学をしたとき、そして、GEに入って日本法人の社長になったときが人生の大きな転機だったとしています。30歳のとき米国留学を希望したのも「早く経営をやってみたい」という思いからであり、BCGからGEへの転職も、経営戦略やセオリーでは語れない「感性」を、「経験」の場を通して磨くことで、自らの経営者としての素質や能力を高めたいとの思いからだったようです。
とりわけ、GEでのジャック・ウェルチとの出会いは、BCGで多くの経営者を見てきた著者にも衝撃的であったようです。そのカリスマ性とエネルギッシュな仕事ぶり、日本のビジネスパートーナーの名前を100名以上覚えていたという繊細さ、そうしたことからもうかがえる、仕事の半分以上を「人事」に費やしていたというウェルチのリーダー育成の方法や考え方などが紹介されています。
外資系企業の徹底したリーダー人材の育成方法を、日本企業のそれと対比的に解説しながらも、「外資」礼讃に陥ることなく論を進めている点もポイントです。自ら経営者として、革新を求める、コンプライアンスをしっかりするといった「外資」的な枠組みと、チームワーク、顧客志向といった「内資」的な枠組みをハイブリッドさせることが、日本に軸をおいた外資系企業の強みにつながるとしています。
巻末にリーダーシップに関する名著が紹介されていますが、本文で語られていることは机上論ではなく、すべて経験に裏打ちされているため説得力があります。さらに、リーダーシップの本としてだけでなく、外資系企業の日本人トップの「キャリアの物語」としても読め、キャリアの入り口にある人にとっては、たいへん啓発的な本ではないかと思いました。
併せて、マネジメントの本としても読むことができ、今まさに企業風土の変革やリーダー人材の育成が求められている「内資」のビジネスパーソンが読んでも、得るところはあるのではないかと思われます。
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【本欄 執筆者紹介】
和田泰明 わだ やすあき
和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士
1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー
和田泰明 わだ やすあき
和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士
1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー