公開日 2011.07.07 深瀬勝範(社会保険労務士、人事コンサルタント)
退職給付債務(たいしょくきゅうふさいむ)
退職後に従業員に支払う退職金および企業年金の見込額のうち、現時点で発生していると認められるもの。企業にとっては、将来、従業員に支払わなければならないものであるから、「債務」として認識される。
我が国における退職給付債務の把握方法は、原則として予測給付債務(PBO:Projected Benefit Obligation)の考え方が用いられている。これは、退職時に見込まれる退職給付の支払い総額(退職給付見込額)のうち、期末までに発生していると認められる額を、一定の割引率および現在から退職までの予想期間(残存期間)に基づいて割引計算する方法である。ただし、従業員数300人未満の小規模企業等では、退職給付債務に期末自己都合要支給額(期末において全従業員が退職すると仮定した場合に支払うべき退職金総額)等を用いる簡便法も認められている。
退職給付債務は、企業会計基準の改定に伴い2000年4月から算出が義務付けられた。導入当初は、退職金・年金支払いのために必要となる資金を十分に確保していなかった会社、あるいは退職金・年金資金の積み立てにかかる利率を市中金利よりも高く設定していた会社において多額の積み立て不足が表面化し、これらの会社の経営に大きな打撃を与えた。