フレキシキュリティ

公開日 2011.07.07 深瀬勝範(社会保険労務士、人事コンサルタント)

フレキシキュリティ=flexicurity(ふれきしきゅりてぃ)

 EU諸国の労働、社会保障政策の基本的な考え方を示す言葉で、柔軟性を意味する「flexibility」と安全を意味する「security」を組み合わせた造語。解雇規制の緩和や正社員・非正規社員の処遇格差の是正等を通じて「雇用の流動性」を高める一方、失業期間中の生活保障や職業訓練を充実させることにより、「労働者の生活の安全性」を向上させようとする考え方。このように一般的には相反する「雇用の流動性」と「労働者の生活の安全性」を両立させることにより、成熟産業から成長産業への労働異動が促されて、経済成長にも寄与する効果があると考えられている。

 2000年以降、多くの先進国が失業率の上昇に苦しむ中で、フレキシキュリティに基づく政策を行っていたデンマークやオランダの雇用情勢が比較的堅調に推移していたところから注目されるようになった。EUでは、2005年に発表した雇用戦略にフレキシキュリティの考え方を取り入れ、それ以降、加盟国への導入を推奨している。

 日本でも、フレキシキュリティに基づく労働政策が検討されるようになってきたが、それを推進するためには、「手厚い社会保障にかかるコスト負担をどうするか」等の問題を解決していくことが必要になる。