サーチ理論

公開日 2011.07.07 深瀬勝範(社会保険労務士、人事コンサルタント)

サーチ理論(さーちりろん)

 即座に取引相手を見つけられないときの売り手、買い手の行動研究を通して構築された理論で、主に消費者行動の分析において用いられる。この理論を雇用分野に応用したマサチューセッツ工科大のダイヤモンド教授ら3名の研究が2010年のノーベル経済学賞を受賞したところから、注目を集めるようになった。

 現在、多くの先進国では、企業の求人意欲が高まっているにもかかわらず、失業率が高止まりする傾向が表れている。これは、近年の失業が、求人件数に対して求職者数が多いという数の不均衡ではなく、求人側と求職側の双方が自分の希望に合致するまで相手を探し続けるという「ミスマッチ」から発生しているからである。サーチ理論は、このような「ミスマッチ」により失業が発生することを実証的な研究から証明した。

 サーチ理論によれば、今後の雇用改善のポイントは、労働市場におけるミスマッチの解消ということになる。日本においても、この考え方に基づき、トライアル雇用を奨励するための助成金の支給や、新卒者専用の就職相談窓口の拡充等を通じて、ミスマッチの解消に向けた雇用対策が講じられるようになってきている。