公開日 2011.06.24 和田東子(HRDジャーナリスト)
Herrmann Model(はーまんもでる)
ゼネラル・エレクトリック(GE)の人材開発部門の責任者であった、ネッド・ハーマン(Ned Herrmann)が開発した「ホールブレインモデル」(全脳モデル)のこと。人間の脳を大脳新皮質の左右半球と、辺縁系の左右半球の合計四つのパーツで構成されているとした。このモデルはロジャー・スペリー(Roger Sperry カリフォルニア工科大学教授・ノーベル賞受賞)の「右脳・左脳モデル」と、ポール・マクリーン(Paul MacLean アメリカ国立精神衛生研究所・脳進化と行動部門主任)の「三位一体型脳モデル」を統合して作られた。
ハーマンは脳の四つのパーツは異なる機能を司っているため、優位に働く脳優位(俗に“利き脳”)を調べれば、その人の行動と思考特性を類推できるとの仮説を立てた。利き脳を調べるためには、「ハーマン脳優勢度調査」(Herrmann Brain Dominance Instrument/HBDI)を用いる。HBDIでは診断結果から人の思考スタイルを次の四つに分類する。
A象限:分析する人
B象限:組織する人
C象限:人間関係を重視する人
D象限:視覚化する人
だれでも最も優先される思考モード(優先象限)と、その反対に優先されない思考モード(最低優先象限)がある。優先象限に合致した仕事には人はモチベーションをもつが、最低優先象限に合致する仕事にはまったくやる気を出せない。
また同じタイプに属する人同士は相互理解が容易でコミュニケーションが取りやすい。ただし、同じだけに競合したり、“井の中の蛙”になることもある。
ハーマンモデルはこのように、利き脳の理解を通じて自己認識とチーム内での相互理解を深め、人員の適性配置や個人とチームの能力開発、ひいてはより適切な人事政策、組織改革等を実現することをねらいとする。
ハーマンモデルは生理学的なモデルではない。しかしGEをはじめとする多数の企業が採用し、それらの結果から、計量心理学をはじめとする多くの研究者によってその妥当性が認められている。
■参考文献
『ハーマンモデル―個人と組織の価値創造力開発』Ned Herrmann